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2018年7月31日

vol.92 外注国家日本の行く末 ~人手不足・GDP成長至上主義が家族・幸せを壊す?~    

vol.92 外注国家日本の行く末 ~人手不足・GDP成長至上主義が家族・幸せを壊す?~    

深刻な人口減少・人手不足を前に、外国人労働者に関する議論が世間を賑わせている。
 
政府は、これまで事実上の外国人受け入れのゲートウェーとなっていた、いわゆる「技能実習制度」の拡充のみならず、造船・介護・建設・宿泊・農業を対象に新たな在留資格を創設する予定だ。6月に出された骨太方針などでその方針を明記している。就労資格は5年という年限を設ける見込みであり、一定の専門性・技能を求めることから「移民ではない」と各所で強調はしているが、虚心坦懐に見て、単純労働者受け入れの方向に舵を切り始めていることは間違いない。
 
総務省の就業構造基本調査などによれば、我が国の介護離職者(親などの介護のために仕事を離れる人)は、既に約10万人に上るとのことだが、特に介護人材の不足は深刻で、2035年に約80万人不足するとの試算もある。また、待機児童のニュースが世間を騒がせ続けているが、保育士の不足も深刻で、私の周りでも「保育園落ちた日本死ね」とまで下品なことは言わないまでも、職場復帰をするにあたり、困っている声をよく聞く。
 
欧州等でのいわゆるホーム・グロウン・テロ(移民2世など当該国育ちのテロリストが引き起こすテロ行為)の悲惨なニュースを聞くにつけ、「移民の同化」は理想論だけで片付く生易しいものではないと思う。移民1世は自ら覚悟を持って移住するものの、そこで生まれた2世3世たちは、自分で選んで生まれたわけではない土地で、周囲との肌の違い、生活習慣の違いから差別を受け、疎外され、祖国・社会への憎しみを倍加させていく。
 
頻発するテロを見ながら、そんなことを考えると、本格的な移民の受け入れというのは、よくよく慎重に考えた方が良いと言うのが原則としての私見にはなる。しかし、一方で、介護人材や保育人材などの人材不足の深刻化を考えると、そして、詳述はしないが、農業や建設などの分野における人手不足の悲鳴を各地で聞くにつけ、現在の政府の取っているような「ギリギリの受け入れ方向」は仕方がないのかな、とも思う。
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さて、以上は、移民問題を前に、私を含む多くの日本人が、おそらくは一般的に持つ問題意識や理解であるが、今回書きたいのは、実はそういうことではない。移民問題の向こう側にある人手不足、更にその向こうにある経済至上主義が、果たして我々の社会の持続性や幸福につながっているのか、というそれなりに深遠なテーマだ。
 
結論を先に書けば、何か決定的な解決策があるわけではなく、この論考でも、恐らく最後まで悩みを吐露するだけなのだが、可能であれば是非お付き合いいただければと思う。
 
改めて書くまでもないが、一昔前は、親の介護や子供の世話は、家事労働の典型であった。かつては、老後(平均余命)が今よりは一般的に短く、また、子どもに関しても、ここまで習い事や塾に行くのが当たり前ではなかったため、現在の負担とは大きく異なるが、少なくとも、介護や保育・教育の「外注」が稀であったことは確かだ。
 
大学時代、マクロ経済学の講義を受けていた時、教官はよく「家事労働はGDPに含まれません。」と強調していた。考えてみれば、掃除や弁当作りから介護から教育に至るまで、家族が「無償」で愛情をかけてやってきた行為だが、それらが「外注」される(企業がサービスとして行い対価を払う)ことでGDPに含まれ、経済成長を果たしてきたことになる。
 
政府も社会も、耳あたりの良い言葉を使って、やれ働き方改革だ、女性の社会進出だ、医療・介護の効率化だ、イノベーションだ、と色々な御託を並べ、私も大きな流れの中で、「まあ仕方ないよな」とは思うが、乱暴に書けば、「人と人のつながりを生む無償の労働行為」を「カネが取り結ぶ有償のサービス」とする方向に、この世界は大きく大きく向かっている。そうすることが合理的だから。即ち、GDPを増やし、家族も一見助かるから。しかし、世の常と同じように、得るものが大きいと失うものも大きい。何か見えないものが大きく崩れつつある不安を抱えているのは、恐らく私だけではないのではないか。
 
さて、そんな中、せめて、有償のサービスによって浮いた時間を何に使うかを我々は考えねばなるまい。それを、より経済的利益の増す「お仕事」だけに使うのではもったいない。是枝監督の『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞して話題になっているが、家族をテーマにすることの多い同監督は『そして父になる』という映画の中で、こんなセリフを印象的に使っている。
 
福山雅治演じるエリート・サラリーマンが「子供との付き合いは時間の長さではないでしょう」(適時適切に必要なアドバイス等ができるかどうか、という含意か)と述べるのに対して、地域の電気屋のオヤジをしているリリー・フランキー演じる父親が「そりゃ時間でしょ」とやんわりと、しかし毅然と反論するシーンだ。
 
親と子どもと妻や夫と心から触れ合うとはどういうことか。日々の仕事にあくせくと追われながら、人手不足の時代だからこそ、経済成長至上主義の時代だからこそ、考えてみたい。
 
筆頭代表CEO
朝比奈 一郎

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<1>青山社中フォーラムVol.43 元内閣官房まち・ひと・
しごと創生本部地方創生総括官 山崎史郎 氏による講演会
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山崎史郎氏が青山社中フォーラムに登壇します。

山崎氏は、1978年に旧厚生省へご入省後、来るべき高齢化社会に備えて介護保険法の検討から改正まで携り、介護保険制度を成立させた立役者です。その後は内閣総理大臣秘書官や地方創生総括官を歴任されるなど、日本社会の喫緊の課題に立ち向かう司令塔としてのご活躍をされてきました。

2015年に、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部地方創生総括官就任以降は、人口減少問題を抱える地域社会の未来を見据えた戦略立案や実行に、地方自治体等と協力しながらご尽力され、抜本的に地域の活性化・生き残りをどうするべきか、という大きな課題に取り組まれました。

ご退官後に『人口減少と社会保障』という著作を上梓され、話題になっていますが、続いて、地方創生についての編著も出されるご予定です(対談者の一人として朝比奈も参画させて頂く予定です)。

今回の青山社中フォーラムでは、山崎氏のこれまでの人生の歩みやご経験から、人口減少問題や社会保障制度等までをテーマにお話し頂きます。

本講演が皆様の今後のアクションを促す一助となれば幸いです。奮って参加ください。

【日時】2018年8月8日(水)19:30-21:00
【会場】一般財団法人高度技術社会推進協会(TEPIA)B1F会議室A
 住所:〒107-0061 東京都港区北青山2-8-44 
    東京メトロ銀座線外苑前駅3番出口から徒歩4分
 URL:https://www.tepia.jp/access

【申し込みページ】http://ptix.at/dhUzgY

【参加費】講演会2,500円(青山社中後援隊メンバーは1,500円、割引コード別途送付)
※8/7(火)以降のキャンセルは返金不可となります。コンビニ・ATMでチケットを購入してキャンセルした場合、またクレジットカードで購入して支払日から50日以上経過した場合は500円の返金手数料が発生します。

【内容(予定)】
19時00分 受付開始 
19時30分 開会

19時35分 山崎氏による講演


20時05分 質疑応答
20時30分 閉会

【講演者プロフィール】
1954年 山口県生まれ
1978年 東京大学法学部卒業
1978年 厚生省(現厚生労働省)入省
1992年北海道庁(高齢者医療担当課長) 
1994年厚生省高齢者介護対策本部事務局次長
1998年厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長
2003年 厚生労働省老健局総務課長
2006年 内閣府大臣官房審議官
2008年内閣府政策統括官(経済財政運営担当) 
2010年 内閣総理大臣秘書官(菅内閣) 
2011年 厚生労働省社会・援護局長 
2012年 内閣府政策統括官(共生社会政策担当) 
2013年 消費者庁次長 
2015年内閣官房まち・ひと・しごと創生本部地方創生総括官 (2016年退官) 
2018年 駐リトアニア国大使に就任

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<2> 青山社中リーダーシップ・公共政策学校説明会を開催 〜ビジネスパーソンを含む多くの方々に、パブリックマインドを持ったリーダーとして更に活躍していただく為に〜
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10月に青山社中リーダーシップ・公共政策学校を開講致します(3月まで)。

「日本版ケネディスクール」を志し、多分野に通ずるリーダシップと、世の中の動きを掴む大局観を、具体的なテーマと仲間で養う集中講義です。

ビジネスパーソンとして社会の潮流を一段高い視点から捉え、より大きな成果を上げたい方、政治・行政に携わる中で政策立案スキルや仕事力を高めたい方、漠然と公への思いを持ちながらも、どのように転身を図るべきか考えあぐねている方、は是非門を叩いてみてください。

様々な業界から集った少数精鋭の仲間たちとの刺激的な交流の場がありますし、気鋭のオピニオンリーダーとして政策現場に多大な影響力を持つ招聘講師陣と共に全力でサポート致します。本年度は受講者がより能動的に参加できる、インタラクティブな講座を心掛けております。

録画による遠隔オンライン受講もできますので、遠方の受講者や欠席者へも十分フォロー致します。

※本年度は「木曜19:30~21:30」開催となります。
・リーダーシップ編(10/4、11、18)
・政治・行政編(11/1、8、15)
・経済・財政編(12/6、13、20)
・政策実務編(1)(1/17、24、31)
・政策実務編(2)(2/7、14、21)
・医療・社会保障編(2/28、3/7、14)

9月に無料体験授業兼説明会を行いますので、どうぞお気軽にお越しください(席が埋まり次第締め切らせていただきます)。
申込ページ: https://aslg2018.peatix.com/

9月8日(土)17:00 – 18:30 (担当:久保田/政策実務編(2))
※説明会後に懇親会あり。希望者は実費にてご参加いただけます。
9月13日(木)19:30 ~ 21:00 (担当:朝比奈/リーダシップ編)
9月20日(木)19:30 ~ 21:00 (担当:森原/政策実務編(1))

場所:弊社セミナールーム(東京都港区南青山2-19-3サザンキャッスルビル2F)

※ホームページも順次、本年度バージョンにアップデートして参ります。
https://aoyamashachu.com/project/education/leader_extension/leader_ext-memorandum_of_intent
※パンフレットはこちらよりダウンロード可能です。
https://aoyamashachu.com/project/education/leader_extension/leader_ext-pamphlet

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<3> 朝比奈が軽井沢町の未来共創アドバイザーに就任
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軽井沢町の歴史・文化を尊重しつつ、50年〜100年後を見据えた住民参加型のまちづくりを推進することを目的に「軽井沢22世紀風土フォーラム」という会議が行われています。

7月より朝比奈が未来共創アドバイザーに就任し、「軽井沢22世紀風土フォーラム」への参加、住民ヒアリング、ワークショップの開催等を通して具体的なプロジェクトの企画や推進に向けて、支援を進めていきます。

今月は14回目の基本会議に参加し、ファシリテーターとして取り組むべきプロジェクトのテーマについて委員・役場・住民と意見を交わしました。

https://aoyamashachu.com/news/2018/5713.html


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<4> 「JAPAN VISIONS presented by 参議院自民党」をサポート
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参議院自民党が、「内政・外交国家ビジョンセミナー(JAPAN VISIONS)」を開催。若者を中心とした一般参加者250名のほか、オンラインで質問を受け付けるなど新たな試みを通じ、2つの国家ビジョンについてオープンな議論を交わしました。

青山社中では、国家ビジョン策定プロジェクトをご支援するとともに、今回のセミナーには資料監修として参画しております。

<内政・外交国家ビジョン>
https://aoyamashachu.com/seisaku/2018/5641.html


<参議院自民党「内政・外交国家ビジョンセミナー(JAPAN VISIONS)」>
概要:https://poteto.media/political/japanvisions/
これは、新しい国家ビジョンを、僕らがつくる会。
・第一部:若者が考える日本の未来(伊藤和真(株)PoliPoli CEOほか)
・第二部:日本の内政(片山さつき参議院議員)
・第三部:日本の外交(山本一太参議院議員)

動画:http://live.nicovideo.jp/watch/lv314544104
※タイムシフト視聴には、ニコニコ動画へのログインが必要です。

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<5> ビジネス雑誌「プレジデント」でヤフーの川邊社長
と朝比奈の対談が掲載
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ビジネス雑誌「プレジデント」の連載記事「人間邂逅」にて、6月よりヤフー㈱の代表取締役社長に就任された川邊健太郎氏と朝比奈の対談が掲載されています。

両氏の出会いやこれまでの関係等について触れられています。
https://www.president.co.jp/pre/new/

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<6> 青山社中リーダー塾通信
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*青山社中リーダー塾通信
【社中サロン(リーダー塾Alumniによる活動)】
7月19日に社中サロンを開催しました。

今回は、米国在住のリーダー塾卒塾生、河合顕子さんにお話いただきました。

20代を通して取り組んだ原点である政治マーケティングと、ワシントンD.C.へのMPA留学、またそこを拠点とする民主党系老舗の世論調査・戦略ファームの国際政治チームにおける勤務、そして現在のテーマである「茶の湯を武器にした広報文化外交の強化と、日本のプレゼンス向上」について語っていただきました。

河合さんは、2017年春より「お茶の京都」における宇治茶の国際高級ブランド化およびユネスコ無形遺産登録を目指す取り組みも支援していらっしゃいますが、当日は河合さんのサポーターでもある裏千家の先生の教え「リーダーたる者にこそ、本物のお茶の味を知ってほしい(それにより、舌がきちんと判断できるようになる=本物が守られる)」に則り、「序の茶」体験も行いました。

頂いたのは、栄西より前、日本に入ってきた種に起源を持つ茶畑産100%で、平安神宮のお茶会で使用される最高級宇治抹茶(基本的に市場に流通せず、なんと価格は30グラム6000円!)。

「結構なお点前」でございました。

【リーダーの塾合同クラス】
7月21日、青山社中リーダー塾の合同クラス(1〜8期)として、特別ゲストに日米貿易摩擦時に対日交渉に当たられた日系米国人グレン・S・フクシマ氏にお越しいただきました。

当日は、トランプ政権下の日米通商関係、米国における日系人の歴史や現状などについてレクチャーいただきました。

特に日系人については、第2次世界大戦もあり、日本とのつながりが少なく、韓国系米国人等とも違う展開を見せており、塾生も日系人の歴史と現状を通して米国自体、また日米関係の違う側面を垣間見ることができたようでした。

リーダー塾生はいつでも大歓迎だ、と言ってくださり、オフレコベースで結構思い切った話も交え、質疑応答も白熱し、当初の予定時間を大幅にオーバーした熱弁を奮ってくださったフクシマ氏には、改めて感謝申し上げます。

日米関係も予断を許さない折、実に有意義な合同クラスとなりました。

*NPO法人「地域から国を変える会」(リーダー塾生が立ち上げた団体です)
【北海道津別町】
北海道北東部、北見市の南に位置する津別町において、総合計画策定に向けたビッグデータ活用について、職員向け研修を行いました。経済的には北見市との結びつきが強く、屈斜路湖や阿寒湖などの観光地に囲まれた立地のため、観光地への資源補給の役割を担う事業育成を提案させていただきました。

【新潟県三条市】
都市部から社会人を呼び込み職業訓練を通じて、その地域でのナリワイをみつけていただく~しただ塾。農業6次産業化をテーマとした第3期が7月18日開講し、東京・埼玉から移住した4名の塾生が入塾しました。今回初めてのテーマ設定ですが、単純に農業後継者を育成するということではなく、農業に付加価値を見出すための思考を育てる、約4か月のプログラムになっています。

*一般社団法人「日本と世界をつなぐ会」(リーダー塾生が立ち上げた団体です)
【長野県 軽井沢町】
第14回 軽井沢22世紀風土フォーラム基本会議に参加し、ファシリテーターとして今後取り組むべきプロジェクトのテーマについて委員・役場・住民と意見を交わしました。50-100年後を見据えて重要性の高い防災・交通・環境などのテーマに関する意見が数多く挙がり、委員の専門性や住民のニーズもふまえて方向性を策定していきます。

【群馬県沼田市】
7/7に海外販路開拓支援事業推進協議会の設立総会が行われました。地域一体となって、海外市場において、沼田ブランド(商品・観光体験)の展開を図るため、今後は展示販売会と商談会を日系小売を拠点に実施していきます。朝比奈がアドバイザーに就任し、8月には中国・ベトナム等の海外市場の概況について講演を行う予定です。

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<7> 青山社中のメディア掲載・講演等のお知らせ
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<7月の実績>
・7/7 ぬまた起業塾の開講式にて塾頭として講演(朝比奈)

・7/14 若手社会人・学生の新型リーダーシップ合宿にて講演(朝比奈)

・7/19 The Japan Timesにて論考掲載 (朝比奈)
 題名:A new tax to fix Japan’s dire fiscal straits

・7/23 ビジネス雑誌「プレジデント」にて対談が掲載(朝比奈)
 連載記事「人間邂逅」(ヤフー㈱の代表取締役社長 川邊健太郎氏との対談)

・7/24 フジサンケイビジネスアイ「高論卓説」にて記事掲載(朝比奈) 
 題名:現預金への金融資産課税が妙案 絶望的な財政状況打開に活路

・7/24 生駒市役所にて職員研修(朝比奈)

<8月の予定>
・フジサンケイビジネスアイ「高論卓説」にて記事掲載
・The Japan Timesにて論考掲載 
・日本教育新聞にてインタビュー記事掲載

 
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