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2015年5月29日

青山社中メールマガジンvol.54 合理という非合理について考える ~安全保障関連法案や新人官僚たちなどに思いを馳せて~

青山社中メールマガジンvol.54 合理という非合理について考える ~安全保障関連法案や新人官僚たちなどに思いを馳せて~

安全保障関連法案に関する論戦が国会で本格化している。

奇しくも沖縄返還の記念日でもある5月15日に国会提出された本法案は、新法である「国際平和支援法案」と10本もの現行法改正案をまとめた「平和安全法制整備法案」の2つからなっているが、「グレーゾーン事態対応」「集団的自衛権」「船舶検査」等々、様々な概念や個別のケースが複雑に絡み合っており、国民一般にとっては非常に難解だ。

こうした難解さも一因となって、国民の間で何となく成立への不安感が浸透してしまっており、それに便乗する形で「戦争準備法案」などというレッテル貼りも反対派からは行われている。実際、朝日、日経、毎日等の諸紙が5月に行った世論調査でも、本法案に対し、「反対」「今国会での成立の必要はない」などの意見が多数派を占めている。

このような状況下で、切に願うことは、国会議員におかれては、例えばこうした国民的「不安」に悪乗りする形で、ここぞとばかりに、政権内の矛盾を突いて「鬼の首を取ろう」とするのではなく、是非、「我が国として、どういう世界を目指そうとしているのか」、「そのために、日本外交はどうあるべきなのか」、「米国や中国などの主要各国とどのように付き合うべきなのか」といった基本的な点についての自分なりの立場、即ち、根源的なスタンスを明らかにした上で、議論を進めていただきたいということだ。与野党を問わず、単なる賛成・反対を超えた外交スタンスの表明がまずあって然るべきで、その上で、それに基づく問題点の確認や指摘が必要だ。

私の理解では、物事を真剣に動かそうという行為をリーダーシップの発揮と呼ぶが、よって立つ基盤・ポジション(立ち位置)なき議論から、真のリーダーシップが生まれるはずがない。「事態の変革」という成果が出てくる気がしない。

本法案に対する「何となくの国民の不安」や、或いは、国会議員の「スタンスなき浮遊的な矛盾突き戦術」などの背景にあるのは、「戦争に巻き込まれたくない」「今までみたいな感じで何となくアメリカに依存していればいいのではないか」などと言った、世界情勢を無視した消極的な思考停止であるような気がしてならない。突き詰めれば「損をしたくない」ということが中心となっての言動に見える。

もちろん、私も、戦争には極力巻き込まれないようにするべきだとは思うが、単に「少なくとも自分だけは損をしないようにしよう」という考え方には、どうも共感できない。「損をしないように」というのは、綺麗な言葉で言えば「合理的」な行動、ということになると思うが、この「合理的」というスタンスほど、厄介な曲者はいない。

無駄のない合理的なプロセスや、そこから導き出される結論は、逆説的ではあるが、結果として非合理であることも少なくない。極力「無駄」を排除すべく、個としての想いの発露やそれに伴う他者とのぶつかり合いなどを避け、効率的にお金を稼ぐ「マシン(機械)」のような暮らしは、短期的には「合理的」ではあっても、一生を振り返る際に、果たして長期的に「理にかなった」(=合理的)態度であったと思えるかどうか。

愛読している村上春樹の小説の主人公たちは、合理的に立ち回ろうという人たちや社会に対して、個人の尊厳を守るため、弱々しそうな見かけとは別に、確固たる個性でもって立ち向かっているし、いつも最高のエンターテインメントを提供してくれる伊坂幸太郎の作品群も、先日読んだ「モダンタイムス」などは同名のチャップリンの映画からしてテーマが明らかだが、合理社会に対するアンチテーゼが底流になっていることが多い。こうした作品が、非常に売れているということは、多くの人たちが、合理という非合理に対する、むしろ確固たる不安を抱えていることの証左だと思うが、現実的には、「合理的」に考え、動いてしまうことが多い。

「合理的」ということに関して、先日、入省したての霞が関の後輩と会話をした際にふと思い出したことがある。今から18年前の今頃、私は、上司たる係長から、課長がある会合で使う挨拶文の作成を命じられた。とある団体に加盟する人たちが一同に会する際に、通産省(当時)の担当課長が読み上げる文章だ。入省したてで、気合十分の私は、当該団体の歴史や背景を自分なりに調べ上げ、非常に格調が高いと思われる文章を作成した。

それを見た係長は、「君は、昨年の挨拶を参考にしたのか」という問いをまず発し、私が「昨年の挨拶も一昨年の挨拶も、あまり大きな違いがなく、退屈だと思ったので変えました」と答えると、「余計なことはしなくていい」「行政は継続性が大事なんだ」と言い、赤ペンで、次々に文章を塗り替えて行った(というか去年の文章がベースになった)。

確かに、読み上げる本人である課長の許可の得やすさ、などを考えると、「前例」を大いに活用するというのは「合理的」ではあると思う。しかし、「詰まらないな、、」と思われるような、「1+1=2」的な当たり前の挨拶を言うことが、真の意味で合理的なのだろうか、本当はこうした前例踏襲こそが「非合理」なのではないか、と痛切に思ったことを昨日のことのように思い出す。

ちなみに、あるエッセイによれば、今から約70年前に東京大学法学部を卒業して大蔵官僚となり、文才も買われていた平岡公威(きみたけ)氏は、大臣の国会答弁の原案を書くも、官僚の文章の常識に合わずに没にされたという経験があるようだ。この平岡氏こと、後の大作家の三島由紀夫氏は、今から45年前の1970年、すなわち敗戦後25年の節目に、「果たし得ていない約束 ~私の中の二十五年」という有名なエッセイを書き、その最後の以下のように閉じている。

「私はこれからの日本に大して希望をつなぐことができない。このまま行ったら「日本」はなくなってしまうのではないかという感を日ましに深くする。日本はなくなって、その代はりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであらう。それでもいいと思っている人たちと、私は口をきく気にもなれなくなっているのである。」

筆頭代表・CEO
朝比奈 一郎

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<1> 青山社中フォーラムvol.27:ハーバード大学
社会科学名誉教授 エズラ・F・ヴォーゲル氏による講演会
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ハーバード大学 社会科学名誉教授のエズラ・F・ヴォーゲル氏が青山社中フォーラムに登壇します。
ヴォーゲル氏はハーバード大学で東アジアを中心に社会科学の研究に従事され、1979年には高度成長期の日本の勢いを描いた著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を出版し、70万部を超えるベストセラーとなりました。

今回は日本が世界でNo.1の国家として評価されていた時代から今日まで日本を見続けられており、社会科学の分野に造詣の深いヴォーゲル氏から「国際社会における最近の日本の動向」をテーマに、ご講演頂きます。

講演ではヴォーゲル氏にこれまでの日本社会の系譜をふまえて、現在の日本社会の動向について国際的な視点で触れて頂きます。それを基に、今後日本が再び世界でNo.1の国家と呼ばれるために、自身がどのように行動していくべきか考える貴重な機会となると思いますので、是非ご参加ください。

【日時】6月11日(木)19時00分-20時30分
【会場】青山社中オフィス(最寄駅:外苑前)港区南青山2-19-1 サザンキャッスルビル2階
https://aoyamashachu.com/about/access.html
【参加費】
講演会2,500円(青山社中後援隊メンバーは1,500円、割引コード別途送付)
【内容】
18時30分     受付開始
19時00分     開会
19時05分     講演 ※公演は日本語で行われます。
20時05分     質疑応答
20時30分     閉会

【講演者】エズラ・F・ヴォーゲル(Ezra F.Vogel)氏 (ハーバード大学 社会科学名誉教授)
1958年にハーバード大学にて博士号(社会学)を取得後、日本語と日本の家族関係の研究のために来日し、2年間滞在。61年秋から中国研究および中国語の習得にも着手し、広東省の社会変容の研究で顕著な功績を残す。67年にハーバード大学の教授、72年に同大の東アジア研究所長に就任。日本でベストセラーとなった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を79年に発表。2000年に教職から引退し、10年以上を費やして執筆、発表した「現代中国の父 鄧小平」が、外交関係書に贈られるライオネル・ゲルバー賞、全米出版協会PROSE賞特別賞を受賞。ほか、メディア各紙の年間ベストブック、全米批評家協会賞ファイナリストにも選出。

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<2> 朝比奈が塾頭を務める群馬県沼田市「ぬまた起業塾」塾生募集
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NPO法人地域から国を変える会が運営を支援し、朝比奈が塾頭を務める「ぬまた起業塾」(7月開講)では、説明会(5/30、6/14)の参加者・入塾希望者を募集しています。群馬県沼田市での起業家養成が目的ですが、お住まいの場所に関わらず、参加可能です。ビジネスプラン作成や経営者講話を中心とし、単なる座学だけではなく、魂のこもったカリキュラムを実施します。詳細はぬまた起業塾ホームページをご参照ください。

https://www.city.numata.gunma.jp/kigyo.html

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<3> ビジネス・ブレークスルーChの講義でゲスト講師との対談が放映開始
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朝比奈が講師を務めるビジネスブレークスルーChの講義「社会変革型リーダーの構想力」では社会を変えようと頑張っている人たちを「社会変革型リーダー」と定義し、

1)どのようにして一歩踏み出すかについての講義(2回):朝比奈
2)実際に行動を起こしている人との対談(6回):ゲスト

上記の内容でオンライン授業を行っています。

 5/27(水)より1人目のゲスト講師、熊谷俊人 千葉市長との対談が
放映開始されました。6/24(水)より松嶋啓介 シェフとの対談も放映開始予定です。

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<4> 朝比奈がソーシャルビジネス経営者合宿 「こころざし!2015」に参加
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一部の社会起業家の呼びかけで約50人の社会起業家が集まり、合宿を行いました。
https://aoyamashachu.com/news/2015/1439.html

「失敗に学ぶ!~実は、こんなことやっちゃいました」「経営・人材にまつわる課題に立ち向かう!」
などのセッションを通して経営同士がお互いの経営に纏わるエピソードを本音で語り合い、親睦を深めました。

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<5> 青山社中リーダー塾5期生座学編がスタート
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青山社中リーダー塾5期生の選考が終了し、今年も5/23より座学編の講義をスタート致しました。塾頭の朝比奈の時間的制約もあり、今年度は土曜クラスのみの開講となりましたが、志の高い塾生12名が入塾しました。最初の授業では塾生同士の顔合わせが行われ、各自の考えるリーダーシップについて活発な議論が繰り広げられました。また、7月には期を問わず塾生が一堂に会して行う「合同クラス」が行われる予定で、講師として川邊健太郎氏(ヤフー株式会社 取締役副社長 最高執行責任者)をお招きする予定です。

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<6> 青山社中リーダー塾通信
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*青山社中リーダー1期生 加藤優
私は4年間の総合商社での勤務の後、会社の歯車としてのやり甲斐よりも、自らが主体的に会社、ひいては社会を変革したいと思い現在は父の経営する産婦人科回りの商材を扱う会社に勤めております。青山社中で座学を学んだのは前職時代ですが、そこで得た知識と仲間は現在、そしてこれからの自分を形成する大きな要素になっています。

座学では古今東西様々なタイプのリーダーの色々な「選択」や、成功の過程の様々な失敗を振り返ることで「行動に起こすこと(成功するまで失敗、試行錯誤を繰り返すこと)」「人を巻き込むこと、人から信頼を勝ち得ること」の意義を実例をもって学ぶことができました。言葉に起こすと実に「月並みな学び」ですが、そこで共に学んだ仲間や朝比奈さんの日々の実際のご活躍を見るにつけ、何度も学びが反復されて「これではダメだ」と自分の日々の振り返りに大きな刺激を与えてくれています(座学が終わり週一で合うことはなくなりましたが、久しぶりに合う度に色々なメンバーが様々な角度から自分のやりたいことに向けたアプローチを行っている話はとても刺激的です)。こういった刺激はそこらのベストセラーになっているような自己啓発本をいくら読みふけった所で、実感として得難いものだと確信しています。

「現状を変える」のは大変ですし事業においては社内外にリスクもあります。「口では現状に対する不平不満を言うが、いざ行動には起こさない」「言われたことを言われた通りに、怒られない程度にやる」というのが大多数の会社員の常日頃の行動原則だと思います。人間ですから楽もしたいですし、目先の報酬が劇的に増える確約でもない限り「四六時中自ら進んで汗を掻く」人などいません(そんな人がいたら会社員を続けていないと思います)。一方で多くの会社員は「やる気スイッチ」が入った時には進んで汗を掻きます、現状を打破しようとします。私はまだリーダーと呼ばれるポジションにはおりませんが、上に書いた「(まず自分自身が)行動に起こすこと(成功するまで失敗、試行錯誤を繰り返すこと)」とともに、回りの社員の方々のやる気、自発性の発火頻度や持続時間を高めて社内にいい循環が作れるような役割を果たして行きたいと思っております。

*NPO法人「地域から国を変える会」 ◎青山社中リーダー塾生が中心となり立ち上げた団体です。
【沼田チーム】
起業家養成塾「ぬまた起業塾」創設の支援をしておりましたが、7月の開講に向けて、現在、入塾申込み&説明会参加者を募集しています。おかげさまで、地元で成功されている第一線の経営者や指導実績を多く持つ中小企業診断士を講師として揃えることができました。また、市内の経済団体キーパーソンをアドバイザーとして任命し、「オール沼田」で創業支援を行ってまいります。応募条件に居住地の条件はありませんので、移住&起業を考えている方や、群馬在住の方など、ご本人はもちろんのこと、周囲にいらっしゃいましたら、是非ともご紹介ください。
ぬまた起業塾ホームページ https://www.city.numata.gunma.jp/kigyo.html

*一般社団法人 「日本と世界をつなぐ会」◎青山社中リーダー塾生が中心となり立ち上げた団体です。

今月は新潟県三条市へ出張し、三条市や三条商工会議所と三者間で今年度の方針について協議を行い、概ね方針について三者間での意見が固まりました。今後は海外事業展開モデルの実行をふまえて、三条の個別企業との連携を深めていく予定でございます。具体的にはアンケートの実施や個別企業への訪問を行うことで現状を把握し、海外事業展開モデルの実践に向けて、海外のパートナーと協力しながら、支援していくことを想定しております。

また、三条企業の外需獲得に向け、三条市長の国定勇人氏が呼びかけて作成した「2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合」と連携しながら海外への製品販売を行う戦略についても協議を行いました。

弊会の活動にご興味のある方は、事務局長・駒形までご連絡をお願い致します。

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<7>青山社中のメディア掲載・講演等のお知らせ
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<5月の実績>
5/3 栃木県の地方紙・下野新聞にNPO法人地域から国を変える会が結成した「チーム那須」が掲載 (朝比奈)
https://aoyamashachu.com/news/2015/1471.html

5/10  ビジネスブレークスルー大学の講義を熊谷俊人 千葉市長と収録:放送は5/27開始予定 (朝比奈)
https://aoyamashachu.com/news/2015/1425.html

5/14 「全国都市改善改革実践事例発表会」で審査員を務めた朝比奈のコメントが月間ガバナンス5月号に掲載(朝比奈)
https://aoyamashachu.com/news/2015/1521.html

5/15  総合経済紙フジサンケイビジネスアイ「高論卓説」にて記事掲載 (朝比奈)
題名「安倍総理の米議会演説、評価すべき3つの観点」
https://aoyamashachu.com/news/2015/1451.html

5/21 小松商工会議所にて講演 (朝比奈)
題名「リーダーシップ論から考える地域活性化 ~ものづくり10万人都市新潟県三条市の事例など、各地の経験も踏まえて~」
https://aoyamashachu.com/news/2015/1551.html

5/26 Sansan 株式会社での第11回B to B & IT 広報勉強会にて講演 (桑島)
題名「ベンチャーを取り巻く規制との付き合い方」
https://aoyamashachu.com/news/2015/1546.html

5/28 CSV開発機構にて講演 (朝比奈)
題名:「民間から政府等への働きかけについて」

<6月の予定>
6/18 滝野みのり会にて講演 (朝比奈)
題名:「リーダーシップの本質とは?」~日本を取り巻く諸状況と変革の必要性~

 
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