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2011年7月31日
Vol.07 ~「全体感」のあるエネルギー政策を~
青山社中リーダー塾の講義もいよいよ伝記編を終えた。
7名の古今東西のリーダーについて塾生と共に見てきたが、偉大なリーダーに共通して
いるのは、肝心な時に「全体感」を持っているということだ。
すなわち、偉大なリーダーは、短期的・狭い利害にとらわれることなく、小さな損得を超
えた大きな判断が自然にできるのである。
ユリウス・カエサルは、民衆派としての自己の立ち位置を確立するため、海外での逃亡
生活を余儀なくされようとも、「妻と離縁せよ」との当時の最高実力者たるスッラの脅し
を跳ねつけたし、盛田昭夫は草創期のソニーで、ソニーブランドの確立のため、喉から手
が出るほど欲しかった大口注文を断り、あくまで、海外の有名ブランド名ではなく自社ブ
ランドで製品を販売することにこだわった。こうした時間・空間を超えた「全体感」の
ある諸判断が後の大成功につながったと言える。
翻って、現在、菅総理のいわゆる「退陣三条件」として議論されている、原子力損害賠
償支援と再生可能エネルギー買取の2法案に「全体感」はあるだろうか。
内容はさておき、事故が起こってしまったので早急に原子力損害の賠償スキームを確
定させなければいけないのは確かである。そして、閣議決定されたのは震災の日の朝
という、いわくつきの再生可能エネルギー買取制度の必要性が、脱原発の流れの中で
ますます高まっているのも事実である。
「全体感」として、粛々とこれらの措置を取ることには、一見、何の違和感もないように
見える。
しかし、損害賠償も再生可能エネルギーの買取も、電力料金の上昇要因であり、これら
を粛々と進めるだけだと、家計や産業への負担がジワリと上昇するのは間違いない。
ただでさえ、税金や人件費が高いとされる日本国内から、税金も人件費も電力料金も
安く、おまけに各国とのEPAも積極的に締結しているお隣の韓国等に、企業・工場と共
に雇用が逃げて行くのは火を見るより明らかである。菅総理は、「2020年代の早い段
階で再生可能エネルギーの割合を20%に」と発言しているが、そもそも、20%に高め
る前提として、企業や家計の負担がどれくらい増えて、雇用流出可能性がどれくらい高
まる、などの精緻な判断があったとの話はついぞ聞かない。つまり、この未曽有のピン
チを前にして、電力料金の上昇にどう立ち向かうのか、全体感のある方向性が全く見え
ないのである。
今必要なのは、エネルギー基本計画の見直しを早急に行い、その中で、再生可能エネ
ルギーの割合をいつ頃どれくらいに高めるか、慎重な検討を行うことである。特に重要
なのは、原発の賠償や廃炉費用・再生可能エネルギーの買取措置などで上昇する電
力料金を、他の措置でどれくらいカバーできるかであろう。そうした全体感をもって計画
を見直し、当該目標を達成するべく、再生可能エネルギーの買取価格や期間を決めて
行くのが筋である。震災前に閣議決定した原案を、「とりあえず通してから色々と考えれ
ばよい」としたり、自分の「手柄」にするために早急に通そうとするのは本末転倒・言語
道断ではないか。ピンチの時こそ、「全体感」が重要だ。
筆頭代表 朝比奈一郎
<ご報告事項>
(1)「青山社中後援隊」募集中!
青山社中の理念・事業に賛同し、活動を支援して頂ける方々による会員組織「青山社
中後援隊」の会員募集を始めておよそ1カ月。予想を超える方にご入会いただいており
ます。
会員の皆様には、講演会・シンポジウムなどへの優先参加、青山社中社員・後援隊会
員の方々の交流会の開催など、各種特典をご用意しております。
今後も引き続き、皆様のご入会をお待ちしております。
「青山社中後援隊」についての詳しい説明、近々行われる特典付きイベントの内容、
お申し込みは、こちらのホームページをご覧下さい。
https://aoyamashachu.com/modules/kouentai/
(2)青山社中リーダー塾
青山社中リーダー塾では開講から7月までの3ヶ月間、カエサル、坂本龍馬、
松下幸之助など歴史を変えた7人の偉大なリーダーのリーダーシップについて
学んできました。来月からはいよいよ、国や社会を考えていくことになります。
世界の国家の盛衰の歴史を読み解きながら、日本の今後のあり方を展望し、
塾生の中から日本を支えるリーダーを輩出することを目指していきます。
今後ともリーダー塾をあたたかく見守っていただきますようよろしくお願いいたします。
◆塾生の活動報告<1>◆ 被災地・岩手県大槌町へ(7月16~18日)
塾生14名と朝比奈塾頭が、被災地のがれき処理などに参加。炎天下、魚の腐臭が漂い、
ハエが飛び交う中、重機類が用いづらい山の中腹部のがれきを中心に処理を行いました。
現地でボランティアをコーディネートする「まごころネット」や絶大なリーダーシップを
発揮した遠野市の本田敏秋市長との面会も実現。被災地におけるリーダーシップのあり方
について学んできました。
◆塾生の活動報告<2>◆ 外交・安全保障勉強会「地政学から見た日本」(7月23日)
元自衛隊員の塾生が、日本の国家外交・安全保障について問題提起。
「日本はどのような国家であるのか」(例えば海洋国家、通商貿易国家等であるの
か)、「日本はどのような外交を実施するべきか」について議論しました。
◆塾生の活動報告<3>◆ 読書会(毎月1回開催)
講義の参考文献を読むことで講義内容をより理解し、自分の考え方を論文で発表する
ことを目的とする、塾生の自主的な読書会です。7月30日に開催した第1回は、
「カエサル」がテーマでした。
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【青山社中リーダー塾とは】
青山社中が、「国や社会のことを考えつつ、変革に向けた行動を起こすことの
できる人材」を育成することを目的に、2011年5月に開講しました。
東北・関東地方を大震災が襲い、日本の立て直しが急がれる中、日本再生の
一翼をになうリーダーを輩出したいと考えています。
リーダー塾では、霞が関改革の旗手として活躍をした朝比奈一郎(元経産省)が
文明史・思想史などから日本の行くべき方向を見据える画期的なカリキュラムを
展開しています。
あるべき日本のリーダー像についてや、日本が岐路に立たされている、「原子力
政策」についても扱う予定です。
詳細は、青山社中ホームページ(↓)をご覧ください。
https://aoyamashachu.com/modules/jigyou/index.php?content_id=1
また、 講談社ネットマガジン「現代ビジネス」にも紹介記事が載っています。
ご参考ください。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/5202
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(3)青山社中が「事業仕分け」に参加!
7月16・17日の両日、埼玉県三芳町で「事業の仕分け」が行われ、遠藤がコーディネ
ーターを務めました。今年1月に就任された林町長による、町として初めての試みです。
町民からの無作為抽出の判定人も含め、2班・2日間で計32事業の仕分けを行いまし
た。判定人のみならず、傍聴者からの意見・質問も鋭いものばかりで、開催側としても
大変勉強になりました。
中には、「休日急患診療所」が「廃止・ゼロから見直し」と判定されるなど、厳しい結果も
ありましたが、今後、判定結果を実際の事業にどこまで反映できるか、新町長の腕の
見せ所です。
(4)メディア掲載・講演
<7月>
【メディア掲載・出演】
7月4日号 人とマネジメントWeb情報誌「現場イズム」 インタビュー記事(朝比奈)
http://workium.aidem.co.jp/webmagazine/pdf_top/1107/02.pdf
7月24日 RFラジオ日本「マット安川の価値組ビジネス!」スタジオゲスト(朝
比奈)
【講演】
7月1日 ストリートデザイン研究機構(朝比奈)
「世直し日本!これからの日本に求められるリーダーシップ」
7月9日 慶応大学SFC「ネットワーク政策論」ゲスト講師(朝比奈)
7月16日 相模原倫理法人会(朝比奈)「日本再生に向けた勝負」
7月23日 『未来国会2011』キックオフイベント(朝比奈) 「二十年後の日本」
7月27日 清話会(朝比奈)対談「世界の中で、日本が活躍していくためには!」
<8月の予定>
【メディア掲載・出演】
8月1日号 雑誌「先見経済」(朝比奈)
8月13日 8:00-9:00 BS11「石川和男のひざづめ談義」スタジオ出演(朝比奈)
【講演(鼎談)】
8月27日(土)13:00-17:25 自治体職員有志の会 ※名古屋※ (朝比奈)
(佐賀県知事の古川康さん、元リッツカールトン日本支社長の高野登さんと鼎談)
今後とも青山社中をよろしくお願いいたします。