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2013年1月31日

青山社中メールマガジン vol.26 アルジェリア、シェールガス、そして国家の司令塔

青山社中メールマガジン vol.26 アルジェリア、シェールガス、そして国家の司令塔


「オイルショックの狂乱物価?そんなレベルの話ではない。エネルギーは人の命を奪い、国家の命運を揺るがし、世界の歴史を変えるんだ」

私が初めて資源エネルギー庁に異動して石油やガスを担当することになった際、役所のある先輩から、概ねこのような趣旨のセリフを聞いた。1バレルあたり100ドルを超えることもある今から見れば、まだ可愛い上昇だったということになるが、当時、石油価格が30ドルを突破して歴史的な高騰を見せ、50ドルを伺おうかという頃だった。

当然、私も、ガソリン価格の上昇をはじめ、国民生活に油価高騰の影響が大きくのしかかることはもちろん認識していた。しかし、最悪の事態としてオイルショックの頃のトイレットペーパーの買い占め等を思い浮かべるのが当然だと思っていた私は、先輩の言う「そんなレベルの話ではない」という中身について今ひとつピンと来ていなかった。

そんな時、たまたまロシアも担当していたことから、薦められるままに「石油大国ロシアの復活」という本を読んだ。主たる内容は、基本的にサウジと並ぶ大産油国で有り続けていたロシアが、油価高騰なども受けてエネルギー大国として復活する様子を活写した本だったが、1980年代に外貨不足により必要物資の輸入が滞るなどして経済的に大打撃を受けて政治的にも動揺した旧ソ連の崩壊プロセスと、ソ連のアフガン侵攻に激怒したアメリカのサウジ王家に対するささやき(石油増産による油価の下落)が大きく関係しているという研究結果についても触れられていた。絶対の真偽はともかく、エネルギーが国家の命運を揺るがし、世界の歴史を変えるという理由がおぼろげながら分かった気がした。

その後、アメリカ留学時にブッシュ大統領主導で同国が大義なきイラク戦争を開始していたことを思い出し(注:ワールドトレードセンター破壊などの2001年9月11日の一連のテロ行為は、アルカイダの仕業であるのに、何故かイラクを攻撃する流れに。
MITのチョムスキー教授などは、石油利権目的の戦争だと断罪していた。)、また、遠く、先の大戦の際に、石油輸入の8割を米国に依存していた我が国は外交・国防戦略の立案に苦しんだことに想いを馳せ、エネルギーと国際情勢が密接に絡んでいることをより深く悟ることとなった。

さて、先日、アルジェリアで大変痛ましい人質事件が起こった。イナメナスという内陸都市で10名の日本人を含む多くの犠牲者が出たことは本当に残念である。余談になるが、私もかつてリビアやナイジェリアなど北・西アフリカに出張し、特にナイジェリアでは日揮の方にも大変お世話になった。マラリアや治安の悪さで大変なポートハーコート周辺に多数の技術者が渡り、劣悪な環境下で立派なプラントを完成させた話には非常に胸を打たれたことを思い出す。横浜本社にも何度か行かせていただいたが、私の実感では、総合商社などでもとても及ばないほど、日揮という会社は真のグローバルカンパニーである。

アルジェリアでの事件にも大きく影響していると考えられる隣国マリでの戦闘をはじめとして、西アフリカの治安が急速に悪化している。また、アラブの春前後から、北アフリカ一帯では政治的動揺・治安の悪化が著しい。こうした中、世界有数の石油の埋蔵量・生産量を誇る西・北アフリカでの石油・ガスの生産停滞が懸念されており、国際情勢に大きく影響しつつある。

さらに、北米を中心に「シェールガス革命」と呼ばれているように、天然ガス掘削における革命的な技術進歩により、エネルギーに関する世界情勢が大きく変わるかもしれない事態となっている。まだ技術的・環境的な様々なリスクが取り沙汰されているが、実際に天然ガス価格は下落し始めており、北米で余った石炭の動向も絡み、欧州でもガスの需給が緩みはじめている。こうした状況下、焦ったロシアは、もちろん台頭する中国牽制その他の要因もあるが、エネルギーの潜在大顧客である日本に、領土問題等も絡めて秋波を送り始めている。また、アメリカがエネルギー自給率を上げて中東にあまり関与しなくなると、8割以上の原油を中東に依存している日本にとっては大ごとだ。

我が国として、伝統的な中東からの石油・ガス輸入価格をどう下げるか、TPPも絡んで北米等からシェールガスをどう確保するか(注:米国は自由貿易協定を結んでいる国にしか売らない原則)、供給元の多様化のためオーストラリアやインドネシアやアフリカでの自主開発をどう展開するか、原発や再生可能エネルギー(風力、バイオマス、太陽光、地熱その他)、さらにはメタンハイドレードなどの国内でのエネルギー確保をどう進めるのか、石炭ガス化や石炭火力の高効率化、蓄電技術や省エネ技術の進展はどうなるか。これらの状況も踏まえて、アメリカ・ロシア・中東地域等との外交をどう進めるのか。

まさに、「国家の命運を揺るがし、世界の歴史を変える」ほどに、エネルギーを巡って国内外で激しい動きが今後起こり続けていくことは間違いない。エネルギーや外交・安全保障を巡る大きな議論・戦略論が、ボロボロのうちに消滅した民主党政権下での国家戦略室に代わる新たな「国家の司令塔」で、「総合的に」論じられて決定されることが必要だ。TPPその他の枠組みも実は大きく影響してくるが、経済と外交を分けて決められる時代ではない。今後、日本版NSC(national security council:国家安全保障会議)の議論が徐々に本格化していくと思われるが、経済と外交を融合させた戦略が必要だ。「総合戦略本部」たる閣議の実質化が実態的に困難な以上、一つの役所、機関でおさまるレベルではない政策論が全体感を持って論じられ、方向性が決まるための基盤整備が急務である。


筆頭代表 CEO 朝比奈 一郎

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【1】朝比奈が初の単著を出版いたします!
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2月下旬に、ディスカバー21から朝比奈の単著を出版させていただきます。
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年も変わり、座学編もいよいよ終盤となってきました。
今まで学んだリーダーシップに関する理論、伝記、国家の盛衰、文明論などを
踏まえ、「霞が関と永田町の現状」を学び、主に霞が関を題材として、人事・
組織のあり方について議論しています。
塾生たちは、自主活動として、渋沢記念館の訪問(渋沢健氏の講演会)や先月から
実践している有志による講義の復習勉強会などを実施しました。
また、来月は中曽根元総理が坐禅を組んだことで有名な、谷中・全生庵での坐禅
会、再来月には長野での合宿や若者向けリーダーシップイベントなどが予定されて
おり、多岐にわたって活発な活動が行われています。

★青山社中リーダー塾2013年度版パンフレットが出来ました。
ご希望の方はこちらからお申し込みください。
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<地域から国を変える会より>(※塾生有志で立ち上げたNPOです。)

地域から国を変える会では、2月に活動地域で、地元の方とあるべき政策・施策について語り合い、行政に届けることも視野に入れたワークショップ(WS)を行う予定です。そのため、休日に社会人で集まり、ファシリテーター練習会を実施しています。
WSは、アクションを後押しする起爆剤ですが、一瞬のお祭りで終わってるケースも多いです。ある研究によると、思考から行動にする人は2割、行動から習慣にする人は更にその2割だそうです。私たちは、WSという思考の場から行動に移し、安定した運営になるまで見届けるよう、地域を後方支援します。

NPOの活動の模様はこちら(https://www.facebook.com/chiikikara.org)
をご覧ください。

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【3】 募集開始!青山社中リーダー塾 第3期募集説明会
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青山社中リーダー塾 第3期募集説明会を2月20日(水)から、開催致します。
リーダー塾の熱いライブ感を体験いただける内容になっておりますので、皆さまお誘
いあわせの上、是非、お越しください。

■日時 <全5回>(各回 定員20名 先着順)
-2月20日(水) 19時30分~21時10分
-3月30日(土) 14時~15時40分
-4月6日(土)  14時~15時40分
-4月10日(水)  19時30分~21時10分

※下記回は、塾頭の朝比奈や現役塾生による相談会のみです。カフェ形式で気軽
にご参加いただけます。
(模擬授業はございませんので、ご注意ください。)
-4月13日(土) 14時~16時

■参加費 無料
詳細・お申し込みはコチラ
http://www.wazoo.jp/open/aoyamaleader2013/


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【4】 青山社中のメディア掲載・講演等のお知らせ
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<1月の実績>
【講演】
1月10日 政経倶楽部での講演(朝比奈)
1月15日 小斉太郎氏(みんなの党)主催勉強会での講演(朝比奈)
1月21日 K.I.T(金沢工業大学)虎ノ門シンポジウムでの講演(朝比奈)

【メディア】
1月 月刊グローバル経営(一般社団法人日本在外企業協会発刊)寄稿(桑島)
1月8日・15日  週刊SPA!(1月15日号/22日号)『革命前夜のトリスタ(トリックスタ
ー)たち』(前篇・後篇)上杉隆氏との対談(朝比奈)
1月10日 CSビジネス・ブレークスルー757ch(20:00~)  YJキャピタル株式会社
COO小澤隆生氏を招き対談(朝比奈)
1月12日 Japan Timesインタビュー(朝比奈)
http://www.japantimes.co.jp/news/2013/01/11/news/young-bureaucrats-
plugging-away-at-kasumigaseki-reform/
1月15日 日経Bizアカデミー 日経ビジネススクール講義の模様(朝比奈)
http://bizacademy.nikkei.co.jp/column/report/article.aspx?
id=MMACe3000010012013&waad=ADbKUPfx
1月13日・27日 BS JAPAN「一柳良雄が問う日本の未来」(前編・後編/11:30~)ゲ
スト出演(朝比奈)

<2月の予定>
【講演】
2月4日 国際交流基金「中東・北アフリカグループ招聘事業」におけるクウェート・バーレーンの若手向け講演(朝比奈)
2月9日 松下政経塾主催 卒塾フォーラム「湘南未来フォーラム2013 in 江ノ島~みんなで湘南の未来を考えよう!~」パネリスト(朝比奈)
2月15日 アステラス株式会社 輝き塾第5期(朝比奈)
2月16日 「ソーシャル時代の政治」水野ゆうき我孫子市議会議員、安倍宏行フジテレビ報道局解説委員とのパネルディスカッション(朝比奈)

【メディア】
2月3日 BS JAPAN 「一柳良雄が問う日本の未来」(再放送、11:30~)ゲスト出演(朝比奈)
2月4日 週刊東洋経済「新世代リーダー50人」(朝比奈)
2月7日 CSビジネス・ブレークスルー757ch(20:00~)  鈴木英敬 三重県知事を招
き対談(朝比奈)

 
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