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2013年9月30日
青山社中メールマガジン vol.34 リーダーに求められる中庸、あるいは両立についての雑感
「こんなところに…。」と絶句するようなところにその山荘はある。
中曽根元総理の別荘である日の出山荘だ。私にとっては都合三回目の訪問になるが、塾生たちに是非見せたいと思い、奥多摩での青山社中リーダー塾の合宿の最終日、みんなでバスを貸し切り、近くの西多摩郡日の出町にある同所を訪問した。
「こんなところに…」という冒頭の感想は、一人茶を立てたり、読書をしたり、沈思黙考したりしたと言われる大政治家の別荘が「かくも山深いところにあるのか」という感慨から来るものだけではない。今から30年前に、時のアメリカ合衆国大統領であるロナルド・レーガン氏とその夫人がここまでわざわざ来た、という事実にも由来する。現在のオバマ大統領に置き換えて考えると、諸事情に鑑みて、同様のことが起こることはほぼあり得ないとも思う。
人間には、特に「場」の力とでも言うべきものか、書物や会話からはイメージできないような電流に打たれたような感覚を「現場」に行くことで持つことがあるが、まさにこの場所は、中曽根氏が内政や外交上の諸課題に対し、どのような使命感と気迫をもって決断を重ねて行ったのかが追体験できるような感覚を与えてくれる。特にレーガン大統領とのロン・ヤス関係(ファーストネームで自然に呼び合う仲)とも呼ばれる固い絆を構築するための、サミットの場や別荘を使った信頼構築プロセスを学べるのが興味深い。より抽象的には、大局的判断に依った外交・内政戦略の構築と、PRへのこだわりとのバランス・両立を模索した作戦拠点であったようにも感じる。
一般的には中身がある人はPRやプレゼンテーションが下手で、逆に、PRやプレゼンテーションがうまい人は中身がイマイチだったりするものだが、中曽根元総理は、考えを重ねて練り上げた案を、巧みなレトリックや象徴的人物を使って政策として宣伝したり(例:行革における土光氏など)、サミットの記念撮影の際には、さりげなく(実は周到な計算があるわけだが)中央のレーガン大統領の横に立って日本や自己のPRにも努めるなど、中身と見せ方のバランスが極めて良かったと思う。「中庸」の体現なのか、はたまた完全な「両立」なのかはともかく、この観点からは、間違いなく傑出したリーダーであろう。
ただ同時に、中曽根元総理は、ある意味で、本人の実力とは別に極めて恵まれた時期に宰相を務めることのできた幸福な方であるとも思う(「運も実力のうち」とも言われるが・・・)。今は、当時とは比べ物にならない混迷の時代ではないか。トータルバランスの取れた、さしもの大宰相中曽根康弘氏でも現下の状況に立ち向かうのは容易ではないと思う。
その大きな要因は経済と外交である。当時とは異なり、日本の自動車や家電が世界を席巻しているわけでもなく、しかも、今や日本の財政赤字の積み上がり方は尋常ではないところまで来ている。金融政策もすでにマネタリーベースは2年で2倍(すでに国債の発行額の約7割にあたる額を日銀が買い入れ)を目指しており、長期国債やETFなど買えるものは何でも買うような状態である。量・質共に、これ以上の打つ手なし、とも言うべき状況であろう。米国のQEに対して、日本の金融政策はQQE(質も量も)などと言われることもある。特に経済の波乱要因という意味で、個人的に最近印象深かったのが、9月のFOMC(米国連邦公開市場委員会。公開市場操作についての意思決定機関)での「何もしない」決定が、「驚きをもって」迎えられ、ドル安が進んだことだ。金融緩和の出口が見えない状況(先細るロウソクになぞらえて、よく米国ではtaperingなどと報道される)を一体どう収束させるのか。中身とPRの総合芸術が求められる作業だ。
外交面でも、最近のケニアでの混乱が典型であるが、中東アフリカ地域が火種として燃え盛りつつある。特に、シリア制裁を巡る9月の混乱は米国の力の低下を象徴する出来事であった。個人的には、元々経済財政マターを扱うアリーナとして登場したG20において、シリア制裁のような純粋外交マターが討議されるなど、G8プロセス(外務省系)とG20プロセス(財務省系)が渾然一体としてきたことがもう少し象徴的出来事としてとらえられるべきだと思うが、いずれにせよ、流行りの言葉で言えば、世界はGゼロ時代、いわば群雄割拠の多極化時代に突き進んでいるように見える。
すなわち、経済的にも外交面でも、中曽根総理時代のように、「日本は、まずは米国とガッチリ組むことを模索すればそれで大体OK」という状況ではないことは明らかだ。そして、このような混迷の時代にあっては、ますます、政策力もあり、マネジメント力もあり、リーダーシップもあり、PRやプレゼン力もある、、、というような高能力の政治家が本来求められるわけだが、難しいのは、一般的に、高能力の人が道徳的にも素晴らしいわけではないということである。
確かマイケル・サンデルの著作であったと思うが、リーマン・ショックの後、公的資金を注入して金融機関を救済する際に、「ウォール街」の住人たちの給料をどこまで削るべきかという議論が、「正義」の在り処の問題として、象徴的に取り上げられているケースがあった。「運用の失敗」ということと、「強欲である」という二つの軸で、彼ら「高給取り」は裁かれるわけだが、米国は、「強欲」より「失敗」に厳しいとされる。私は、日本は、逆に「失敗」ということよりも「強欲」であるということに厳しい社会なのではないかと思う。そうであるが故に、例えば霞が関批判なども「少子化対策が機能していないではないか」などの政策の「失敗」への批判よりも、「天下りでボロ儲けするのは許せん」というような「強欲」批判に偏りがちだ。
もちろん、強欲は忌むべき性質ではあるが、人間のエネルギーの源になっているという側面があるのもまた事実である。日本国民は、もう少し、「清廉潔白」ということよりも「高能力」なリーダーを求めるようにするべきだとは思うが、これは国民的傾向でもあって容易に変えられるものでもなく、また、ある意味で誇るべき国民文化でもあるのかも知れない。まあ、難しいながら、引き続きリーダー塾では、トータルバランスの取れたリーダーを育てるべく頑張るしかないな、などと思いながら、講義に備えてルソーやニーチェを読み返してみたりする。治者と被治者の同治性を達成する共和主義者、道徳を無視して力への意志をしめす強者、、、リーダーが求めるのは中庸なのか対立概念の両立なのか、自然の中で沈思黙考できるのもまたリーダーとしての大きな力である。
筆頭代表CEO
朝比奈 一郎
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【1】 パブリックマインドの志士、集う!
青山社中リーダーシップ・公共政策学校
リーダーシップ系講座が開講しました
~引き続き、受講申込みの受付をしております~
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9月18日(水)、青山社中リーダーシップ・公共政策学校リーダーシップ系講座が開講いたしました。
おかげさまで、パブリック・マインドの意識が高い生徒の皆様に受講いただくこととなり、初回講義ではリーダーシップ論について、朝比奈が教鞭を振い、熱心な議論が交わされました。
開講に際して、本校趣旨に共感の声を多数いただきました方々に厚く御礼申しあげます。
さて、10月24日(木)開講の政策系講座、既に開講しておりますリーダーシップ系講座(過去の講義はビデオ受講にて対応可能)について、引き続き受講申込みの受付をしております。申込みはこちらのサイトからどうぞ。
各科目ごとのお申込みなど、フレキシブルに受講することができますので、お気兼ねなくお申し込みください。
■受講申込みサイト(https://aoyamashachu.com/project/leader_extension/admission.html )
■本校のパンフレットはこちらからダウンロードできます。(https://aoyamashachu.com/download/index.html )
■説明会の様子の動画はこちらから、ご覧いただけます。(9分程度)(http://www.youtube.com/watch?v=9zYICMfJY5Q&feature=youtu.be )
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【2】大盛況御礼! 青山社中フォーラムVol.17
内閣官房副長官 世耕弘成氏 講演会
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去る9月27日(金)19時30分~、安倍内閣の現役の官房副長官として最前線でご活躍されている世耕先生をお迎えし、青山社中フォーラムを開催いたしました。おかげさまで、多くの方にご聴講いただきまして、ありがとうございました。
官邸内での緊迫感あふれるお仕事ぶりなど、生でしか聞けないエピソードに皆様もご満足いただけたことと思います。
青山社中フォーラムでは、今後とも新しい日本の一翼を担うキーパーソンをゲストにお迎えしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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【3】 地域活性化事業 第2弾が動き出す!
新潟県三条市プロジェクト始動
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NPO法人地域から国を変える会理事長として、朝比奈が総務省の地域力創造アドバイザーに就任しておりますが、那須塩原市からの招聘に続き、新潟県三条市でも活動が開始します。
9月30日の三条市役所職員向け講演会を皮切りに、シリーズで講演やワークショップを行い、職員の啓発や市活性プランニングに取り組みます。
今ある資源を見つめ直し、職員の皆さんと「人を呼び込む」仕掛けを考えてまいります。
一方のNPO法人チイキカラ(地域から国を変える会)では、引き続き、中心市街地活性事業について、地域住民の方と共に合意形成を図るボトムアップのアクションをいたしております。
チイキカラと青山社中による地域活性事業にどうぞご期待ください。
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【4】 青山社中リーダー塾通信
~飛躍していく塾生たち~
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こちらでは、様々なフィールドで活躍の場を広げている青山社中リーダー塾生の活動を紹介いたします。
青山社中リーダー塾通常講義では、夏休みを終え、思想編に突入しました。
近代西洋政治・経済思想、東洋思想を学ぶことで、東西の異なる思想を感じ、寛容な視野で物事が見られることを目指します。
また、今月は1期生から3期生が一堂に会した合宿を奥多摩で開催、アウトドア体験やバーベキューを通じて交流を深め、深夜・早朝まで喧々諤々の議論を行い、かけがえのない時間を過ごしました。
奥多摩という自然の中で、個々のリーダーシップが、仲間と共鳴し合うことで更に研磨され、新しいアクションに繋がっていくことを期待しています。
【青山社中リーダー塾1期生/山田憲吾】
青山社中リーダー塾1期生の山田憲吾です。監査法人から外資系財務職勤務を経て、現在フリーで日系企業などに対する海外事業の支援業務を行っております。
(海外での主な活動場所はラオス、マレーシア、インドネシア、シンガポールなど。)
持ち前のフットワークと血の通ったネットワークを礎に、海外パートナーと連携した、
販路拡張、生産拠点開拓、資材や人材調達、市場調査報告や資金調達などをお手伝いさせて頂いております。昨今、経済のグローバル化とIT通信技術の進化により、働くことへの意識や価値観、働き方のスタイルは多様化を極めるようになりました。私自身、枠にとらわれることなく、求められる役割があれば例えそれが地球の裏側であろうと果敢にチャレンジしていき、自ら課した役割を果たすことで、新しい信頼の絆とネットワークが作られ、ともに働ける仲間が増える・・・そんな働き方を実践していきたいと思うようになりました。また日頃の活動で海外を往来するうちに、
日本が世界に誇れる文化、技術、サービス、ひいては感性や美学などをもっと積極的に海外へ発信していく活動をしたいと思うようになり、同じ思いを持つ青山社中リーダー塾の仲間と共に「日本と海外をつなぐ会(仮称)」を立ち上げることになりました。この会の活動を通し、日本の競争力あるモノ、技術、コンテンツ、サービスなど
が世界へ展開され、また日本国内に存在する魅力がもっと海外から注目を集め、日本人がさらに胸を張って世界と切磋琢磨していける、そんな変化へのきっかけ作りをしたいと思っています。こちらの会の活動にご興味のある方は是非是非、(kengo@seizanship.com )までご連絡ください。
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【5】自治体経営の実践的な能力を磨く!
10月26日(土)、「G1東松龍盛塾」が開講します
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地域で変革を導くリーダーを育てることが、日本をよりよくする道。
朝比奈が塾長を務めますG1東松龍盛塾は、地域から日本を変えていく、政治家・パブリックリーダーを育てる道場です。
主に自治体議員や地方政治家志願者を対象として、自らの使命を自覚し、生涯つきあえる仲間をつくり、自治体経営の実践的な能力を磨くプログラムを全国各地で提供します。
G1サミットに集う30代、40代の改革派知事・市長の各地での挑戦は非常に頼もしく、
未来への希望を強く感じさせてくれます。明確な問題意識をもち既得権や前例と戦い、地域に根差しながら幅広い視野で国家の将来を強く思い、行動するその姿は、
東湖、松陰、龍馬、隆盛ら幕末の志士達と同じ匂いがします。
日本をよくする、そのためには地方の現場に根を張ったリーダーが、高い志と広い視野を持ち、幅広いネットワークを活用し、必要な能力を兼ね備え、具体的な変革を全国各地で「同時多発的」に起こしていくことだと確信します。
志が高い人々と、G1東松龍盛塾で会えることを楽しみにしています。
■詳細はHPをご参照ください
(http://g1summit.com/g1toshoryusei/ )
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【6】 青山社中のメディア掲載・講演等のお知らせ
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<9月の実績>
【講演】
9月14日(土)「やり過ぎる力~混迷の時代を切り開く真のリーダーシップ論」(九州ビジネス部会主催)にて講演(朝比奈)
9月30日(月)「やり過ぎる力と基礎自治体職員の在り方」三条市役所にて職員研修向け講演会(朝比奈)
【メディア】
9月5日(木)下野新聞(朝刊)チーム那須結成関連記事(朝比奈 ※地域から国を変える会として)
<10月の予定>
10月10日(木)「ビジネス&パブリック秋の交流会@六本木ケントス」地域から国を変える会活動紹介(大山)
10月17日(木)講演「やり過ぎる力~混迷の時代を切り開く真のリーダーシップ論」(尾瀬academy主催)(朝比奈)
10月30日(水)公開ディスカッション「リーダーシップ育成フォーラム~グローバル社会って、何?」コーディネーター(公益社団法人東京青年会議所主催)(朝比奈)