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2014年2月28日
青山社中メールマガジン vol.39 フィギュアスケートから外交を思う
家族が寝静まった深夜に観戦することが半ば常態化していたが、ソチ五輪も終わり、極端に減ってしまっていた睡眠時間が元に戻りつつある。私と同じ状態の読者の方も少なくないと思う。
多くの日本人選手の活躍、開会式の失敗(“四輪”)を逆手に取った閉会式の演出、ロシア選手の大活躍(冬季五輪では凋落気味だったロシアだが、開催国ということもあって大躍進)など、色々と印象的なことが多かったが、私にとっては、やはりフィギュアスケートが鮮烈に記憶に残っている。
特に浅田選手の圧巻とも言うべきフリーの演技が国民に深い感動を与えてくれたこと、まだ19歳の羽生選手が無類の強さで金メダルをもぎ取ったことなどが代表的であるが、ここで強調したいことは、それら個別の事象ではなく、それらの対比である。
浅田選手は順位としては期待よりも低い6位に終わったが、国民感情的には、金メダルを10個でもあげたいほどの熱烈な支持と共感を呼んだ。特に、最後の演技は、ショートプログラムの失敗で追い込まれているという状況下にあって、3回転以上のジャンプを8つ取り入れるという、極めて難易度の高い構成であったが、そんな中でも、持てる力をフルに出しきって見事にやりきったという事実が言葉に表せない感動を日本人にもたらした。
一方、羽生選手は見事に金メダルを獲得したわけだが、本人の「悔しい」というコメントが如実に表しているように、最終演技としては、実力を発揮しきったとは言えない内容であった。したがって、個人的な感情も含めた見解にはなるが、浅田選手ほどの感動と共感を国民にもたらしたとは言い難いと思う。むしろ、満身創痍の中で晴れ晴れした表情で演じ切ることができた高橋大輔選手(6位)の方が感動的であったかも知れない。
この順位やメダルを超えた価値判断は、日本人にまだまだ色濃く残っている主観主義を表しているような気がしてならない。もちろん、仮に浅田選手や羽生選手が米国選手だったとして、アメリカでもある程度同じような国民的反応が見られたかも知れないが、日本人ほどには、浅田選手の頑張りに対して情緒的に反応しなかったのではないかと思う。
我が国は、近代化・西洋化していく中で、特に戦後に如実だが、客観性や合理性を重視する傾向を強くし、数値や透明性などを頑張って信奉する姿勢を示してきたわけだが、やや大げさに言えば、今回のフィギュアスケートを巡る世論などを見るに、そうした表面的な姿勢は本音のところですぐに吹き飛んでしまうような印象だ。
つまり、日本人にとっては、客観的にわかる結果や数字(金メダル・1位)ということよりも、感動をもたらしてくれるプロセスが重要であるということだ。そのことを更に深堀して言えば、「勝つための客観的・合理的な戦略」などよりも「高度な技術を追求する職人気質」が好きであり、滅びの美学も含めた「困難への挑戦」が大好きだということだと思う。
小説「永遠のゼロ」が飛ぶように売れ、映画化後も大ヒット上映中であるのも、「究極の凄腕パイロット」である主人公が、途中までは合理主義(「無駄死に」はしない)というスタンスを取りながら、最後は特攻に志願するというストーリーラインが大きく影響していると感じる。(未読・未見の方におかれてはネタバレで済みません。)
合理主義や客観主義、それに基づく市場主義や法治主義などは、表面上は日本社会に幅広く取り入れられ、かくいう私も大学の法学部をはじめ、役人としてもそうした基本概念を教室や職場で叩きこまれてきているわけだが、それでもそれらはどこか、西洋から移し替えられてきた植木のような感覚がどこかにあり、追い込まれた状況で職人技を連発する浅田選手の感動的演技などを見てしまうと、そもそも、「植物」が移植される前からある土壌としての主観主義的あり方を体内に感じてしまう。
先般、青山社中リーダー塾の合同クラス講師としてお招きした江戸時代の思想文化の研究者である高山大毅氏によれば、江戸思想の三つの柱は①家業道徳、②儒学(朱子学)、③武士道(仏教や神道の影響は相対的に低い)とのことだが、特に、目先の儲けやトレンドに軽々と乗るのではなく、「家業」「職分」を道徳として重視する一種の職人気質は現代にも色濃く残っているような気がする。
この土壌が残っているということは、もしかすると、これだけのアジアの追い上げを受けても底堅い輸出などの要因にもなっているのかもしれない。胡坐をかいていられる状況ではないものの、素材・中間品・工作機械など、職人芸的な技術に裏打ちされた輸出品はまだまだ数多い。(※貿易赤字が常態化しつつあるし、円安局面にも関わらず、想定していたほどには輸出が増えないわけだが、赤字の大きな要因はエネルギー輸入の増加であり、輸出額そのものは推移を見れば明らかなように文字通り底堅いと見るのが私の見解)。
しかし、やや心配なのは、昨今の外交や安全保障を巡る国民感情である。ここでは歴史の詳細には立ち入らないが、領土問題にせよ、靖国参拝問題にせよ、狭い範囲で「高度に職人的に」経緯や議論を詰めて行けば行くほど、困難への挑戦が、滅びの美学も含めたプロセス論として感動的に受容されてしまい、国際世論における客観的位置づけやそれを受けた合理的思考を吹き飛ばしてしまいかねない。
「結果よりもプロセス」「高度な職人技」「困難への挑戦」などのキーワードを土壌として保持し続け、主観的に感動する心は残しつつも、同時に、合理的・客観的思考を冷徹に持つということをどうバランスさせるか。つまり、浅田選手の素晴らしい演技に心からの拍手を送りつつも、どうすれば戦略的に金メダルが取れるのかを同時に考える「しなやかさ」をどうすれば持つようになれるのか。
フィギュアスケートから外交・安全保障を考えるというのはやや大げさかもしれないが、青山社中リーダー塾第三期生の座学編を終え、第四期生の募集・指導を考えるにあたり、つらつらとそんなことを考えている。
筆頭代表CEO
朝比奈 一郎
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<1> 入塾志願受付中!青山社中リーダー塾第4期生
無料説明会・模擬授業は、次回は3/15(土)16時です。
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青山社中リーダー塾第4期生(5月開講)の入塾志願は、青山社中ホームページhttps://aoyamashachu.com/project/leader/outline2014.htmlから受付しております。例年、4月での応募が殺到いたしますので、お早めにご応募ください。また、「無料説明会・模擬授業」の次回開催は、3/15(土)16時です。リーダー塾のライブ感を体験いただける模擬授業を塾頭・朝比奈一郎が行いますので、この機会に是非どうぞ。
■入塾志願について
青山社中リーダー塾第4期生募集(2014年5月開講)の入塾志願は受付中です。入塾を志願される方は、入塾志願サイト(https://aoyamashachu.com/project/leader/outline2014.html)下部の【青山社中リーダー塾 入塾志願フォーム】をクリックのうえ、必要項目をご記載ください。必要項目には、皆様の基本情報に加え、志望動機(1000字程度)が必要となります。なお、入塾志願フォームから送信できない場合は、office@aoyamashachu.com 宛に入塾志願フォームと同内容を明記のうえ、メールにてお申し込みください。皆さまのご応募を心よりお待ちしております。
■現役青山社中リーダー塾生からのメッセージ
・柴田 真也子(2期生)/外国新聞社記者(ジャーナリスト)
中東・南アジア・欧州で育った私は、本当の国際人になるためには自分の出身国の知見を深める必要があると思いリーダー塾に入学しました。朝比奈塾頭の歴史的側面を含めた講義のおかげで、「海外から考える日本」という視点もより深まりましたが、同時に「日本の中から考える日本」という視点も生まれました。しかし、リーダー塾で得られる最も大きなものは同士との出会いだと思います。塾生各々が様々な問題意識を持ち、アクションをとろうとしています。分野は必ずしも重なるわけではありませんが、互いの意見に耳を傾け、時には批判しながら意識を高め合います。一人では出来ないことでも、背中を押してくれたり、協力してくれたりする仲間に出会うことは簡単ではありません。問題意識を持ち行をとらなければならない、またそういった同士に出会いたいと思っている方はぜひ入塾してください。
・筒井 泰介(2期生)/京王電鉄 勤務
私は、「ワクワクした人が育つ仕組みを作りたい!そのためにはまず地域から!」と考え、地域活性の取組みを開始し始めた頃にこの塾を知りました。リーダー塾では国家単位で物事を考える機会が多く、個人や地域を中心に考える自分の目線とのギャップも感じましたが、講義や合宿での議論を通じ、「国の単位、地域の単位、個人の単位のどこに心地良さを感じて行動するのかはその人次第。ただ、どの人でも大きい枠組みで捉えないと、時代に合わない、誤った、求められていない行動を起こすことになる」と理解するようになりました。過去に学び、現状を学び、将来に可能性を感じることは、全てに通じる基軸であり、常に“旬”な知識。リーダー塾ではそれを熱き仲間と学んでいく“濃密”な場です。
■無料説明会・模擬授業 概要
・開催日時
3月15日(土)16時~
4月 5日(土)16時~※現役塾生との交流会を予定、模擬授業はありません。
4月 8日(火)19時30分~
4月11日(金)朝7時30分~
・会場
青山社中株式会社 会議室
東京都港区南青山2-19-3 サザンキャッスルビル2F
弊社は、銀座線「外苑前駅」4a出口から、徒歩3分のところにございます(国道246を渡り、松屋とユニマットの間の道をまっすぐお進みください。ローソンのはす向かいにある城南石材が入っているビルの2階にございます)https://aoyamashachu.com/about/access.html
・参加費 無料
・お申込みは、申込みサイト(http://kokucheese.com/event/index/138914/ )から受け付けております。
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<2> 後援隊募集!3月10日(月)「後援隊の集い」を開催、
ゲストに政策研究大学院大学教授 竹中治堅氏をお迎えします!
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3月10日(月)19時30分から、後援隊会員の皆様を対象とした「後援隊の集い」を開催致します。ゲストには、政策研究大学院大学教授 竹中治堅氏をお迎えし、2014年の日本政治(安倍政権)の展望と見通しに関するお話をいただきます。竹中先生との交流と合わせて、会員の皆様同士の親睦を深める場、皆様の青山社中に対するご意見やご要望を伺う場とさせていただければと考えております。
■「後援隊の集い」参加登録はこちらからお願いします
http://kokucheese.com/event/index/147956/
■開催概要
・日時 3月10日(月)19時30分~21時30分
・ENCOUNTER(最寄駅:銀座線外苑前) http://n-encounter.com/access.html
・会費 4,500円(フード・ドリンク代込み)
■なお、後援隊の集いは、後援隊へのご登録が必要です。
後援隊登録はこちらからお願いいたします。
(https://aoyamashachu.com/supporter/index.html )
なお、以下メールアドレスにご連絡を頂ければ、当日の後援隊の集いの場での後援隊登録も可能です。
(office@aoyamashachu.com )
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<3> 青山社中リーダー塾 通信
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青山社中リーダー塾3期生座学編は明日3月1日、最終講義を迎えます。最後の講義まで、通常の講義内容に加え、タイムリーな話題も入れつつ、毎回熱い議論が交わされました。また、今年度第3回目の火曜・土曜両クラス合同講義では、日本学術振興会特別研究員の高山大毅先生をお迎えし、中国(特に儒教の思想)の影響などにも触れて頂きつつ、江戸時代などを中心に、日本の思想について語って頂きました。塾生の活動では、一期生から三期生までの有志が横断的に関っている「日本と世界をつなぐ会」が立ち上がるなど多くのアクションが生まれています。今後の塾生の船出に大いにご期待ください。(日本と世界をつなぐ会:日本固有の魅力について、異文化との共感や融合を図りながら、創意工夫による新しい価値創造にも意欲的に取り組む団体。)
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<4> 盛況御礼!青山社中フォーラムvol.20
玄田有史 東京大学教授 講演会
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2月21日、玄田有史 東京大学教授をお招きし、青山社中フォーラムを開催いたしました。フォーラムは終始アットホームな雰囲気で、講師とお客様との会話のキャッチボールも交えながら、現代社会の歪みを、玄田先生ならではの希望学の見地を含めた多様な視点で語って頂きました。お客様に書いていただいたアンケートでの満足度も大変高く、有意義な時間になったのではないでしょうか。今後とも青山社中フォーラムを宜しくお願い致します。
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<5> 申込みはまだ間に合います!
青山社中リーダーシップ・公共政策学校 現代のリーダー編
3/12伊佐山建志氏、3/26熊谷俊人千葉市長がゲスト講師
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好評を頂いております、青山社中リーダーシップ・公共政策学校政策系講座は、佐橋亮神奈川大学准教授による外交・安全保障分野に突入しました。さて、3月12日(水)・26日(水)は、それぞれ伊佐山建志氏、熊谷俊人千葉市長をゲスト講師としてお呼びしております。まだご参加は間に合いますので、申込みはこちらのサイト( https://aoyamashachu.com/project/leader_extension/admission.html )からどうぞ。
■申込みサイトについて
ゲスト講師をお呼びする3月12日(水)・26日(水)のご参加をご希望の方は、申込みサイトより、「リーダーシップ系講座受講申込フォーム」に入り、「第4部:2回(現代のリーダー編)3万円」にチェックを入れお申込みください。なお、申込みサイトからうまく申し込めない場合には、office@aoyamashachu.comにご連絡ください。
■ゲスト講師ご紹介
・リーダーシップ系講座 第13回(3月12日(水))ゲスト講師:伊佐山建志氏(元特許庁長官、元日産自動車副会長、前カーライル・グループ日本法人会長)
33年に渡る通産官僚としてのご経験、及びその後の日産自動車、カーライル・グループ(投資ファンド)でのご経験を踏まえ、パブリック及びビジネスの双方の視点から今日本に必要なリーダーシップについて、グローバルな視点も交えつつ、幅広くご講演を戴きます。
・リーダーシップ系講座 第14回(3月26日(水))ゲスト講師:熊谷俊人千葉市長
30代の現役の千葉市長として日々ご奮闘されている熊谷氏に、市政におけるチャレンジ、特にどのようにリーダーシップを発揮してきたか、を中心にご講演を戴きます。また、ご講演の他、青山社中リーダーシップ・公共政策学校(リーダーシップ系講座)受講者とディスカッションをしていただく予定です。
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<6> 青山社中のメディア掲載・講演等のお知らせ
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<2月の実績>
2月7日(金)南信州広域連合懇談会にて講演(朝比奈)
2月10日(月)HY研にて講演(朝比奈)
2月15日(土)立命館大学「立命館 霞塾」(朝比奈)
2月16日(日)「リーダーと国家の盛衰 講義」(G1東松龍盛塾主催)(朝比奈)
2月22日(土) 都道府県対抗第二回学生観光PRアワード 審査委員(遠藤)
http://kankoaward.gakuchika.com/2nd/
<3月の予定>
3月7日(金)南信州ブレインフォーラムにて講演(朝比奈)
3月11日(火)自民党議員勉強会にて講演(朝比奈)
3月19日(水)自民党群馬県連にて講演(朝比奈)