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2015年9月7日

青山社中メールマガジンvol.58 安倍政権は「新三本の矢」で人口問題を解決できるか?

青山社中メールマガジンvol.58 安倍政権は「新三本の矢」で人口問題を解決できるか?

自民党総裁に無投票で再選された安倍総理は、先週、記者会見をして、次期内閣で「新しい三本の矢」を推進することを表明した。その中身は、1)希望を生み出す強い経済、2)夢をつむぐ子育て支援、3)安心につながる社会保障、の3つだが、私が特に注目しているのが2)の子育て支援だ。具体的な目標として、一人の女性が一生に産む子供の平均数である合計特殊出生率を1.8にすることを掲げている。

なぜ、特に子育て支援に注目しているか。主に理由は二つある。

一つは、「子育て支援」という衣を着つつ、その実、かなり「人口減少への歯止め」ということを意識していると思われる点である。安倍総理の会見を注意深く見ると、子育て支援に関して、「不妊治療」や「結婚支援」など、現在の母親等に対する支援だけでなく、「子作り支援」をかなり意識していることがうかがえる。「1億人が活躍する社会」「合計特殊出生率1.8」などのキーワードも出ているが、マクロな視点から人口減少対策をするという意図が色濃い印象だ。

二つ目の理由は、一つ目とも大いに関係するが、仮に、本音ベースのところで人口減少対策を意識しているとすると、安倍政権もいよいよ本気で人口問題に取り組む本格内閣を目指すのか、という感を抱かざるを得ない点である。確かに、安倍政権は、安全保障関連法案を成立させるため、子供を持つ母親層を特に敵に回した感じがあり、「子育て支援」というワードからは、彼女らを味方につけようという魂胆が透けて見えてくる。ただ、一般的には、政策効果がかなり後になり、しかも、普通に生活する人にとっては直接の影響を感じられない人口減少対策は、票に結び付きにくい政策であり、財政健全化などと並んで、本格政権でなければ全面的に取組もうとはしない課題だ。

もちろん、多くの国民が人口問題の重要性を頭では理解はしているはずだ。積み上がる財政赤字を前に、返し手の減少を避けなければならないのは常識だし、全国の半分とも言われる消滅可能性都市の問題も深刻だ。生産者も消費者も減り続けるとなれば、内需の比率が8割を超える我が国でGDPを成長させることは容易ではなく、そんな活気のない将来が透けて見える国に投資しようという企業や個人は国内にも海外にも出てくるはずがない。

ただ、こうした問題は「日々の生活」からは意識しにくいため、力のない政権では後回しになりがちだ。我が国の悪しきスタンダードである「通常の短命政権」では取り組めない政策実現に本格的に突き進むということであれば、それはかなり喜ばしい。
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人口減少対策は効果を出すのが極めて難しい。先述の理由により、例えば「3つの重点施策」に入れるほどに前面に出すのは困難であったが、これまでの政権下でも、人口減少対策をやっていないわけではない。今年の3月に、新たな少子化社会対策大綱が出たことは記憶に新しいが、今まで、エンゼルプラン、新エンゼルプラン、少子化社会対策基本法、子供・子育て応援プランなど、様々な少子化対策が矢継ぎ早に打ち出されている。一時は、1.26まで落ち込んだ合計特殊出生率も1.4を超えるところまで来てはいる。だが、人口置換水準(人口が減らない水準)とされる2.07からは程遠く、減少の歯止めという点からみると、大きく効果を発揮しているとは言えない。

本格的に人口を増やすためには、かなり総合的に、あらゆる手を打ち尽くす必要があるわけだが、これがまた容易ではない。婚外子の割合が諸外国に比べて極端に少ない我が国においては、まず結婚を増やすことが重要だが、恋愛結婚の数はここ40年ほどあまり変化がないものの(60数万件)、見合い結婚が激減しており、これを埋める対策が難しい。そんな中、男女の生涯未婚率や女性の平均初婚年齢・出産時年齢は上昇し続けている。

仮に結婚したとしても、子供を産むことについての経済的障壁(教育費、保育費、その他衣食住にかかる費用等)、結婚の高齢化に伴う出産・子育てへの肉体的・精神的障壁が立ちはだかっている。そして、仮に第一子を生んだとしても、子育てに関する生活環境(ベビーシッターや保育所等の整備状況)が良いとは言えないため、また、労働環境にも厳しいものがあるため(長時間勤務の常態化、年休取得のむずかしさ等)、第二子以降を産むことが難しい。これら伝統的「子育て支援」に対しては、相対的に最も力が注がれてきたが、状況はあまり好転しているとは言えない。40年前は、全世帯に占める子供のいる世帯は半分以上あり、そのうち、6割は2人以上の子供がいる世帯であったが、現在は全世帯の1/4しか子供がおらず、そのうちの半分の世帯は一人っ子である。

こうなると、フランスや北欧諸国が合計特殊出生率を大幅に改善した例にならい、人口増加を目指して、婚外子の積極的是認・奨励や移民の本格的受け入れが必要に思われるが、これまた、実態的にも感情的にも容易ではない。実は昨年の人口減少数が約25万人であることを考えると、約20万件行われている人工中絶が仮にゼロになるだけで、かなり人口減少が防げる理屈だが、こちらも、もちろん簡単な話ではない。

皮肉なことに、歴史的には、我が国は、何とか人口増加を抑制したいという悲願があり、実際、70年代などには、出生数の抑制を目指していた。「夢」を達成したと思ったら、今度は逆に「人口を増やせ」と言われている。文明化を目指して、妾(めかけ)のような「悪習」を何とか失くそうとして来た我が国で、その意図されている性質は異なるにせよ、人口増加のために婚外子を増やすべきという議論が出てきていることは、何とも不思議な感じではある。

いずれにせよ、タブーなき議論をしつつ、本格的な人口増加策が図れるか、本格政権としての真価が問われることは間違いない。

筆頭代表・CEO
朝比奈 一郎

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<1>青山社中リーダーシップ・公共政策学校 10月14日(水)開講
第1回申し込み期限 10月9日(金)迫る (体験授業動画アップロード中)
https://aoyamashachu.com/project/leader_extension/index.html
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https://aoyamashachu.com/project/leader_extension/index.html

【講座のポイント】
・大組織の中で改革の活動をリードしてきた、朝比奈によるリーダーシップ講座の直接指導があります。
・現代日本における「政治・行政」「経済・財政」「地方自治」「医療・社会保障」の各分野の解決策を模索する上でのリテラシーを養うことができます。
・各分野一流の講師たちから最新の知見を得ることができます。
・同じ志を持ったビジネスパーソン、公務員など様々なバックグラウンドの方々とネットワークを構築することができます。

【講座内容】(毎回水曜 19:30~21:30 第1回お申し込み期限 10月9日(金))
10月:リーダーシップ編(全3回) 担当:朝比奈一郎(青山社中筆頭代表CEO/中央大学客員教授)
11月:政治・行政編(全3回)   担当:竹中治堅(政策研究大学院大学教授)
12月:経済・財政編(全3回)   担当:小黒一正(法政大学経済学部教授)
1月:地方自治編(全3回)     担当:久保田崇(前・陸前高田市副市長/元内閣府参事官補佐)
2月:医療・社会保障編(全3回)  担当:宮田俊男(日本医療政策機構エグゼクティブディレクター・医療政策ユニット長)

各分野1講座あたり一ヶ月に3回の授業(夜19:30~21:30)となっており、ご興味のあるものだけ個別受講することも可能です。
お忙しいビジネスパーソンの方でもお仕事の負荷に合わせて関心分野の最新知識を効率的に学ぶことができる上に遠隔受講もご用意しています。

10月9日(金)が全講座セット申し込み(割引あり)、第1回目の講座申し込み締め切りとなっております。
定員もありますので、受講をご検討されている方は下記URLをクリックして受講フォームよりお早めにお申し込みください。
https://aoyamashachu.com/contact_aslg1/

以上、校長の朝比奈をはじめ講師一同、皆様と議論できることを楽しみにしております。

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<2> 青山社中フォーラムvol.28:年金積立金管理運用独立
行政法人 理事兼CIO水野弘道氏による講演会を開催しました。
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9/8に年金積立金管理運用独立行政法人 理事兼CIOの水野弘道氏をお迎えし、ご講演頂きました。水野氏の経験に基づいた「意思決定のプロセス」や「グローバル人材」に関するお話を、弊社CEO朝比奈から質問させていただく形式で約1時間の間、語って頂きました。

参加者からは「非常にユニークかつ実践的だった」「アクションを起こしていく上で、参考になる内容となった」などの感想が寄せられました。会場も満員となり、大盛況な青山社中フォーラムとなりました。

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<3> 青山社中リーダー塾通信
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*青山社中リーダー塾生が合宿を行いました。

青山社中リーダー塾生が合宿を行いました。リーダー塾は今年で5年目となり、塾生は1~5期生総勢で約100名となります。外部から講師を招いた「パブリックビスピーキング」に関する勉強会や塾生それぞれの人生戦略についての発表などを行い、親睦を深めました。
https://aoyamashachu.com/news/2015/1792.html

*青山社中リーダー塾2期生:高橋諒

「日本人が夢を諦める平均年齢は24歳である」

先日、目にした記事でこんなことが書かれていました。24歳というのは夢を抱いて社会に飛び込んだものの、徐々に現実的になっていく時期でありますが、私が一念発起して医師を志したのも24歳だったこともあり、複雑な感情を覚えました。

前置きが長くなりましたが、本日は少し変わった私の過去と未来のお話をさせていただければと思います。

■期待されたレールから脱線した高校時代
私は首都圏で医業を営む家系に生まれました。医師になることを望まれ、受験と向き合うことになんの疑問を持つことなく育ちました。しかしながら、大学受験を目前に控え、少しばかり遅い反抗期を迎えました。そこで、敷かれていたレールから飛び降り、異端とされる慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)へと進学しました。

進学したSFCはとても刺激的な場所でした。大学の枠に留まらずに様々な分野で泥臭い挑戦をしている学生が集まっており、独特の熱気に包まれていました。私は「普通」であることに焦燥感を覚え、目指すところも分からないまま、自分の限界を超えて様々なものに打ち込みました。

講義はそっちのけで、青臭いビジョンを掲げ、多くの人々に出会い、友人と学生団体を運営したり、自身でインドのスラムで働いてみたりという日々でした。そうして国内外で多くの人々や価値観に触れる中で、「人に尽くすことが好き」「日本が好き」という大事にしたいものが見えてきたように思えます。

■青山社中との関わり
「日本のために何かしていきたい」「経験を整理して、将来へ繋げていきたい」という漫然とした思いに駆られていた時期に塾生告知を目にして、迷うことなく入塾を決めました。

今になって振り返ると、人生においてじわじわとリーダー塾の効果が出てきているなと感じます。朝比奈塾頭と志のある生徒と議論を交わしながら、どの時代にも普遍的なリーダーシップや物事の捉え方、そして何よりも生きるうえでの軸をぐっと寄せ付けることができたように思えます。

■人生の大事な選択こそ直感
軸はありつつも、どんな仕事がしたいのか分からなかった当時の私は、勢いが盛んで、日本から世界に飛び出ていけるポテンシャルのある企業でまずは働こうと、縁のあったDeNAという企業に入社しました。

優秀な人材が多いなかで仕事ができないにも関わらず、海外での赴任、新規事業の立ち上げと多くの経験をさせてもらい充実した日々でしたが、「とある感情」を譲れなくなってしまいました。

それは父親の背中への憧れでした。普段は合理的な判断を行う私ですが、受験失敗や結婚等のデメリットをどんなに洗い出しても、素直な気持ちに取りつかれてしまいました。直感に従い、医師への転身を決意し、今では医学生として夢に向かって進んでいます。恐らく人生の大事な決断は直感で行うのが、最もしっくりくるように思えます。

■これからの人生
目の前の患者さんに向き合える医師を目指しながらも、将来は病院経営を行いたいと考えています。
「やりたいこと」「できること」「求められること」が交わる点でこそ価値が生まれると考えており、医療において民間企業で働いた経験、世界を飛び回った経験は非常に稀有であり、マネジメントに改善の余地がある医療においては価値を提供できると考えています。

医師という職業は体力が資本でもありますが、遠回りできたことはとてもよかったと感じますし、過去は変えられないけれど、見方を変えることで得られるものは多いものだと感じています。

*NPO法人「地域から国を変える会」◎青山社中リーダー塾生が中心となり立ち上げた団体です。
●沼田チーム 「ぬまた起業塾」(7月から開講。塾頭が朝比奈、塾頭代理が大山)では、飛躍的に業績を拡大させた群馬県内優良企業を訪問し、経営者の方々と議論を深め、起業塾塾生の皆さんのやる気に更に火をつけていただきました。10月からはビジネスプランの作成段階に入り、起業家デビューに向けて実践的内容になっていきます。

●那須塩原チーム 地元の皆さまと本NPOで構成するチーム那須では、これまで分野別テーマ(観光、6次産業、農業)でワークショップを行い、政策提言を市役所に出してきましたが、次回より那須エリアの特定の地域(新幹線駅周辺など)について、必要な政策を考えてまいります。どうぞご期待ください。

*一般社団法人 「日本と世界をつなぐ会」◎青山社中リーダー塾生が中心となり立ち上げた団体です。

10/6に在ロシア日本国大使館で行う三条市の展示会がいよいよ来週に迫りました。弊会からは2名がモスクワに渡航し、ロシア視察実行委員会(三条市、三条商工会議所、燕三条地場産センター、三条市貿易振興会)、在ロシア日本国大使館、電通モスクワと連携しながら運営に携わります。また、現地のJETROや金融機関等を中心に、弊会代表理事の朝比奈が経済活性アドバイザーを務める4都市(三条、那須塩原、川崎、沼田)の商材の販路を探ってきます。

11月にはベトナムや香港へ出張し、富裕層へ向けて海外ビジネスに興味のある地域企業の製品を集めた展示会の実現に向けて動きます。特に、消費者に刺さる「コンセプト」「商品選択」「PR」等が重要になってくるため、現地市場に根ざしたパートナーと連携し、戦略を精査していく予定です。

弊会のサービスにご興味のある方は、事務局長・駒形(連絡先:komagata@aoyamashachu.com)までご連絡をお願い致します。

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<4>青山社中のメディア掲載・講演等のお知らせ
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<9月の実績>
・9/16 ビジネスブレークスルーチャンネルの講義にて認定NPO法人ロシナンテス 理事長 川原尚行氏をゲストに迎えて収録 (朝比奈)
※CSスカパー557chにて放送予定
https://aoyamashachu.com/news/2015/1683.html

・9/18 フジサンケイビジネスアイ「高論卓説」にて記事掲載 (朝比奈)
題名:五輪エンブレム問題に思う 「真似る」のは全て悪?寛容も肝要
https://aoyamashachu.com/news/2015/1708.html

・9/19 日本教師教育学会 第25回大会にて講演 (朝比奈)
題名:リーダー育成と地域活性化の取り組みから感じた「地域教育」のあるべき姿

・『キャリア官僚 採用・人事のからくり ? 激変する「出世レース」 』(岸 宣仁 著中公新書ラクレ)にコメントが掲載(朝比奈)
https://aoyamashachu.com/news/2015/1798.html

<10月の予定>
・10/2 四国生産性本部にて講演 (朝比奈)
題名:リーダーシップ論から考える地域・企業の活性化

・10/18 G1東松龍盛塾にて講義(朝比奈)
講義内容:通商政策(TPP)、エネルギー問題(原発問題)などについて

・10/23 「重徳和彦衆議院議員を育てる会」にて講演 (朝比奈)
題名:家康公に学ぶチャレンジ精神 ~天下を取る真のリーダーとは~

 
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