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2016年9月30日

青山社中メールマガジンvol. 70 「働き方改革」の本義

青山社中メールマガジンvol. 70 「働き方改革」の本義

「百年以内に、経済的な問題は解決するか、解決に近づいていると思う。いかにして日々の生活を確保するために働くかという問題は、これまでの人類にとっての最重要課題であった。だが、もし百年後にこの問題が解決されたら、人類は誕生以来の目的を奪われることになる。」 ~ ケインズ「孫の世代の経済的可能性」(1930年)から抜粋・意訳 

政権への期待がしぼまないようにすること、別の表現をすれば、国民が飽きないように「花火」を打ち上げ続けることは、内閣の安定的運営上、極めて重要であることは論を待たない。頭では確かに分かる。

とはいえ、昨年10月の内閣改造時に唐突に出てきた「一億総活躍」が、ようやく1年経つかどうか、というタイミングで打ち出された今回の「働き方改革」には、正直、「また?、今度は何?」という感想を持った方も少なくないのではないか。

中身が不分明なまま、先月(8月)の内閣改造で「働き方改革担当」の大臣が設けられ、今月(9月)に入って、「働き方改革実現推進室」が内閣官房に設置され、外部有識者などで構成される「働き方改革実現会議」が開かれた。今後、「働き方改革実行計画」が練られて発表されるという。

異例なことに、官房副長官が直々に「働き方改革実現推進室長」になり、政権の相当な「気合」は感じる。ただ、中身は、一方で長時間労働の是正が標榜され、一方で、長時間労働を促進しかねない脱時間給的な「高度プロフェッショナル制度」の導入も取り沙汰されるなど、まだ不透明だ。

企業側も、政府の動きを横目に、後者、すなわち「ホワイトカラー・エグゼンプション」的な動きを取るところもあれば(「残業代ゼロ」などと揶揄されてもいる)、逆に約5800人の全従業員を対象とした週休3日制導入の検討が報じられたヤフー・ジャパンのように、前者の時短的動きを見せているところもある。

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さて、ここまで読み返して、何となくネガティブな筆致にも見えるので、敢えて、誤解なきよう強調しておくが、私は、「働き方改革」自体は、今後の日本を考える上で、極めて重要なテーマであると考えている。

国民の人気取りという現実的文脈もあって、今のところ、「働き方改革」は、「長時間労働の是正」といった「勤務時間軽減」を色濃く出している印象を受けるが、いずれにしても、企業や政府で「働き方」が議論され、制度が企画・設計されていくことは望ましいに決まっている。

ただ、強く訴えたいことは、表面的な「働き方の変革」にとどまらず、その向こう側、すなわち次世代の「働き方」ということそのものについて、その本義を掘り下げて考えることがとても大事なのではないか、ということである。

確かに、安倍政権が「一億総活躍」や「働き方改革」を本格的に取り上げるまで、「男性の長時間労働を是正して家事に向ける時間を増やし、結果、子育てや介護に追われる女性の負担を少しでも減らして、彼女らが企業で働けるようにする」ことは、道義的に「良いこと」であり「確かに大切」ではあっても、「とはいえ、実現は無理でしょ」と、現実にはマイナー・イッシューであった。

そして、例えばそうした一般男性の長時間労働是正が、単なる「善行促進」というレベルから、「労働生産性の向上」(アウトプットを時間で割って導出するので、アウトプットをあまり減らさずに分母の時間が大きく減れば生産性は向上)につながるという文脈と結びついた時、さらに、特に政権が強調する「同一労働、同一賃金」などの賃上げその他、デフレ脱却に向けた経済政策と融合した時、重要政策の中心に躍り出て、マイナーだった「働き方改革」がアベノミクス延命の「切り札」と化したことは、とても重要なことだ。

「無駄な残業等を減らすこと(長時間労働の是正)」は、特にサービス産業等における生産性の低さが際立つ我が国において、また、人口減少社会に突入して国内総生産(GDP)が増えにくい現状にあって、浮いた時間の有効活用を通じて一人当たりのGDPの向上につながりうることから、デフレ下での経済活性策として極めて有効であるとも言える。テクニカルには、諸課題を一斉に解決する「センターピン」であるかもしれない。

でも、それだけでの議論で良いのか。「働き方の本義」とは、そんなものなのだろうか。

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言うまでもなく、「働き方」は、本来、「無駄な残業は止めよう」とか「家事に追われる女性を楽にしよう」とか、一歩進んでの「成長戦略に結び付けよう」というレベルで議論が終わるものではないと思う。右に列挙したことは、「そんなことは、当たり前」というレベルであり、ある意味、議論の余地がない。ポパー流に言えば「反論可能性」がない。

現代社会は激変しており、例えば、「AI(人工知能)の発達などにより、今後10~20年以内に自動化されてしまう可能性が75%ある職業についている日本の雇用者は全体の約半分」という研究(オックスフォード大と野村総研の共同研究)もあるが、かなりの高度な職種も含め、今後の仕事・働き方は一変するであろう。

また、昨年末からストレスチェック制度が導入されたが、職場での働き方への悩みなどから、現代社会では、メンタルの不調をきたす人が激増している。現在は、空前のベンチャー企業やソーシャルセクターブームであると言えるが、安定的な収入や大組織を選ばずに、生きがい・やりがいを求めて、スタートアップ企業やNPOに職を求める人も少なくない。

冒頭で引用したケインズは、世界大恐慌の翌年という恐るべきタイミングに(1930年)、『孫の世代の経済的可能性』という論考を発表し、「多くの人が伝統的な仕事や職を奪われ、圧倒的に多くの人々は何もすることがない状態となり、その状態に耐え切れず、精神を病んでしまうのではないか」という心配をしている。

そして、「天地創造以来はじめて、人類は、経済的問題というよりは、科学の力で、今後に獲得できるはずの時間を如何に使って、懸命に、快適に、裕福にくらしていくべきか、という本質的な永遠の課題に直面することになる」と結論づけてもいる。

もちろん、現代は、まだ、世の中は貧困に満ちており、休む間もなく長時間労働を強いられている人が少なくない。ただ、クリエイティブにリーダーシップを発揮して、如何に人生を豊かに彩るか。人生の中核にある「働く」ということに関して、「何を軸とし、何のために」ということをどう意識し、体現し続けるのか。こうした課題は、かつてより鋭く我々に迫ってきていることは間違いない。

こうした本質的な、働き方の本義に迫る議論が、有識者会議等で展開されることを願ってやまない。

筆頭代表・CEO
朝比奈 一郎

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<1> ~視座を高め、一歩踏み出す力を磨く~
  「青山社中リーダーシップ・公共政策学校」開講
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第1回お申し込み期限である10月7日(金)が迫ってまいりました。

企業役員様、コンサルティング会社社員様、自治体職員様など様々な業種の方々が続々とお申し込みされています。

10月7日(金)までにお申し込みいただきますと、5講座以上の受講の場合「受講料20%オフ」となり、大変お得になっておりますので是非セット受講も合わせてご検討ください。

【お申し込みページ】
https://aoyamashachu.com/contact_aslg1/

なお、開講が先の講座につきましても先着順となりますので
なるべくお早めのお申し込みをお勧めいたします。

この機会に様々なバックグラウンドを持つ仲間と、今後の国や社会について議論してみませんか。

講師、スタッフ一同、皆様と共に学べることを心より楽しみにしております。

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<2> 青山社中フォーラム開催のご報告
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青山社中フォーラム Vol.33を開催しました。
https://aoyamashachu.com/news/2016/2856.html

第一部では、高市早苗 総務大臣 より地域経済好循環の拡大、ICTの国際展開、有事の際のリスクの最小化など、省庁を横断する大局的な視野で、日本の課題解決のための取り組みについてお話を頂きました。

第二部では、環境省、藤沢市議会議員、NPO法人フュージョン長池、日本オラクルで活躍されている、4名の青山社中リーダーシップ公共政策学校の卒業生により、リーダーシップと公共政策を学ぶ意味についてパネルディスカッションを行いました。

青山社中フォーラムがこれからの日本の未来を自ら作り上げていく、若手世代の意識を喚起し、アクションを促す一助となれば幸いです。次回の青山社中フォーラムもどうぞ楽しみにお待ち下さい。

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<3> 営業Typeに朝比奈の記事が掲載
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営業パーソンのキャリアを考えるメディア「営業type」に朝比奈の記事が公開されています。経産省時代の「円借款」や「インフラ輸出」など国家間の取引を例に「営業」の本質を語っています。

http://type.jp/st/feature/1965

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<4> 青山社中リーダー塾通信
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*青山社中リーダー塾
青山社中リーダー塾では、塾生による自発的な活動が行われています。

今月は座学編を終えた5期生が集まり、多目的スペース「ソーシャルビジネスラボ (http://social-business-lab.org/)」にて、日本の成長と地方の自立、人口減少社会における将来像、これからの安全保障などについて議論をしました。

変革に向けて、お互い切磋琢磨し合い、自ら「始動」する塾生に対し、進路・経験に関する助言や紹介など、今後ともサポートをしていきたいと思います。

*青山社中リーダー塾 5期生 中村駿介
あなたは何故今の企業で働いているのですか?

そう質問されて、真正面から回答できるビジネスパーソンがどれ位いるのだろうか。

実をいうと1年前の私は真正面から答える事が出来ず、それをただもやもやと思考を巡らせるだけの30代前半の“会社員”だった。

日々、目の前の業務と格闘しつつも、心の奥底では「これは何の為の仕事なのか」と思いつつ、営業をする毎日。しかし、ある時、偶然「アオヤマシャチュウ」という名の知れない私塾の名を知り、興味本位で夜の体験授業へ仕事を抜け出して聞きに行ってみた。それが私と青山社中との出会いなのだが、縁もあって入塾してみると、じわじわと私の中で変わりゆく何かを感じる。それは自分の考えていた事や心に引っかかっていたパズルのピースが一つずつ揃い始め、パズル全体の輪郭が見えてきた感覚に似ているかもしれない。とにかく自分の頭で考え、実践してみる、それは朝比奈塾頭が提言する「始動力」なのだが、特に元々敬愛していた盛田昭夫氏や渋沢栄一氏の生涯を授業の中で考える内に今後のキャリアと称して、現状から年収を上げたい、もっと昇進したい、でも何か新しい事もやってみたいと考える半面、行動を起こさない自分がどんどん恥ずかしくなってきたのである。

青山社中の授業を通して、自分は何を考え、動き、為すべきなのか目の前が開けた私は思い切って大手外資系コンサルティング会社から人材系ベンチャー企業に転職した。いや、正確には転職“してみた”、と言った方が良いほど自分でも思い切って外の世界へ勢い良く飛び出してみた。

それから約一年が経過した今、やはり始動してみて良かったと思う。前職では大企業の経営層へグローバルサプライチェーン改革やコスト削減提案など大掛かりな提案をしており、金額も大きく、それなりの遣り甲斐もあった。しかしながら、一担当の営業力が案件を左右する事はまれで、やはり会社対会社の相対が多くなり、虚しくなってしまう時に多数あった事は否めない。ただ、ベンチャー企業に転職をした今、扱う金額は小さくはなったが目の前の営業業務に集中しつつも、自分単位ではなく、会社やもっと大きい単位で今後どの様な事業を展開すればもっと顧客満足を与える事が出来るのか、業界を活性化出来るのかを考える事が多くなり、視野が広くなってきている。もちろん、楽しい事ばかりではなく、9割は苦しい事や自分の殻を破らなければいけない日々を過ごしてはいるが、充実した毎日を送れている事は青山社中に通ったからこそだと私は強く実感している。

今後は人材業という枠に嵌らず、もっと地域活性化や伝統工芸に従事している人達をより詳細にデータベース化し、全国・世界の職人同士を掛け合わせ、地域活性化に役立てる様な事業も展開していきたいと考えている。

日々始動せねば、成長も無いと肝に銘じながら、自分の成長が日本の成長に繋がると強く信じて働いていきたいと思う。

*NPO法人「地域から国を変える会」(青山社中リーダー塾生を中心に立ち上げた団体です)
ホームページhttp://chiikikara.org

【神奈川県川崎市】
川崎商工会議所・川崎市役所と共に策定を行った「川崎市中小企業活性化のための成長戦略に関する条例」は本年4月1日に施行されましたが、このたび10月に条例内容を施策に反映していくための会議体が設置されることになりました。条例の中には、海外販路開拓「海外市場の開拓等の促進」「人材の確保及び育成」「創業、経営の革新等の促進」など一般的な中小企業活性化条例よりも踏み込んで、施策を促進していくことが書かれています。これから条例を機能させていく段階に入ってまいります。
川崎市役所ホームページ http://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000073236.html

【兵庫県多可町】
本会で創業支援・特産品開発の分野で支援させていただいている「多可町全国うりだしプロジェクト」について、9月16日に東京タワー展望台で多可町長による記者会見を開催しました。「そこまでやったか!多可町」をキャッチコピーにロゴマークを作成し、今後、PR動画の公開(全国から美大生や若手の映像クリエイターを町内に集めて「キャンプ」を開く予定)や、多可町産ラベンダーのエキスを活用した新商品開発、起業家養成、東京での物産展などで町の存在を全国にアピールしてまいります。

*一般社団法人「日本と世界をつなぐ会」(青山社中リーダー塾生を中心に立ち上げた団体です)
新潟県三条市と、隣接する燕市の企業からなる「燕三条貿易振興会」の主催で、JETRO本部、ホーチミン総領事館の後援を頂き、7月に実施した「燕三条ベトナムミッション」の様子がVITV (ベトナムの経済専門テレビ)やKilala(ベトナム人向けの日本紹介雑誌)で取り上げられました。

http://www.kilala.vn/tin-tuc/dam-phan-thuong-mai-voi-doanh-nghiep-vung-tsubamesanjo.html

ベトナムでは引き続き、製品のテストマーケティングを実施するため、検討を進めております。

また、11月には中国の内陸都市(成都・重慶)の視察をし、三条製品の販路開拓の可能性を探ります。3000万人を超える巨大市場の消費者、小売、流通などの状況をふまえ、どのように製品を現地で展開することができるかについて調査を進める予定です。

引き続き①海外市場調査・戦略立案、②海外のビジネスパートナーマッチング、③テストマーケティングの3つのサービスを展開し、活動していければと思います。

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<5>青山社中のメディア掲載・講演等のお知らせ
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<9月の実績>
・9/13 四国リーダー塾にて講義 (朝比奈) 

・9/16 営業Typeにて記事掲載 (朝比奈)
題名:「営業とは、単なるセールスではない」~元GtoG営業マンが考える営業の本質とは
http://type.jp/st/feature/1965

・9/20 フジサンケイビジネスアイ「高論卓説」にて記事掲載 (朝比奈)
題名:君の「名」は? あの人と世界の幸福を真剣に願っているか
https://aoyamashachu.com/news/2016/2853.html

・9/27 KIT虎ノ門サロンにて講演 (朝比奈)
題名:リーダーシップの真髄と青山社中の挑戦
https://aoyamashachu.com/news/2016/2862.html

・9/29 トライセクターリーダーシップ講座にて講義 (朝比奈)

<10月の予定>
・フジサンケイビジネスアイ「高論卓説」にて記事掲載 (朝比奈)
・10/11 土浦青年会議所にて講演

 
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