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Vol.75 自由貿易を巡る不都合な真実 ~トランプが突きつける自由貿易批判~

スミス/リカード以来の自由貿易論は、実は砂上の楼閣? 

トランプ大統領に「当然の事実」を突きつけられて、世界が当惑している。これまで、世界がある意味で金科玉条のように信奉してきた自由貿易論は、実は、理論的には、砂上の楼閣のように簡単に崩れうる代物だったのではないか、と。ごく簡単に、自由貿易論を巡る歴史的経緯を振り返りながら、その衝撃を改めて確認しておきたい。 

近代経済学の祖とも言われるアダム・スミスの主著『諸国民の富』(1776)が、当時、王室中心に展開されていた「重商主義」への批判の書であることは割と広く知られた事実である。王室が国富の中心を「貨幣」におき、貿易差額等で金銀を蓄積しまくることについて批判を加え、むしろ貨幣ではなく、「貨幣によって買われるもの」=「(究極的には)労働」こそが富であると喝破した。王室経済ではなく、国民経済を称揚することで、市場主義・自由貿易論への道筋をつけたとも言われる。原題を見るだけでも、その雰囲気が伝わってくる。(An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations) 

そんな中、株式仲買人として成功していたある男は、風呂(バス)の語源ともなった都市バースでの保養中に、このアダム・スミスの著作を読んで影響を受け、経済学者に転じたと言われている。その男こそ、今日につながる自由貿易論の基礎を作ったデービッド・リカードである。彼は、世界が自由貿易を信奉する原点となった衝撃的著作を19世紀に入って世に出した。以下の説明は一般に「二財モデル」と言われるが、二つの財からなる世界で交易関係を想定した場合、なんと、両方の財についてA国がB国よりも生産性で上回っていたとしても(A国は「絶対優位」)、互いに相対的に効率の良い財に特化した生産活動を行い、交易をする方が、全体としても両国としても、得であることを証明してしまったのである(比較生産費説/比較優位の理論)。 

その後は、基本的に、このイギリス出身の2人の経済学者の議論がベースとなって歴史は推移した。即ち、超大国は、自由貿易を錦の御旗として世界に押しつけた。当時の後進国であるドイツからは、フリードリヒ・リスト等の反論(「ドイツ関税同盟」などに結実)、つまりは、「自分たちこのままだと一生、ハイテク製品が作れず、役割が固定化する」「自由貿易は先進国のエゴ」との議論がぶつけられた。しかし、役割が固定化して有利になる超大国が「心からの聞く耳」を持つはずもなく、「超大国(自由貿易論)vs 後進国(保護貿易論)」の図式は、時を経て国は変わっても基本的に不変だった。 

ところが、である。トランプ大統領を擁したアメリカは、なんと、超大国が事実上、保護貿易へのシフトを主張するという、驚天動地の挙に出て来ている(現在、アメリカは輸入関税の引き上げなどを真剣に検討している)。理論的には、これまで、超大国が短期的な視点でエゴを振りかざす事態は、あまり想定されていなかったが、現実になった。これは、アメリカが振りかざすもう一つの御旗である「民主主義」と深くかかわっているのだが、紙幅の関係でそこは詳述しない。ただ、いずれにせよ、非常に堅固に見えた正義の御旗「自由貿易論」は、実は、砂上の楼閣かも知れないという不安が、今の世界を覆っているのは間違いない。 

もちろん、同時に、理屈は理屈として、現実的には、貿易と投資で深く複雑に入り組んだ国際的な経済関係は、下手に動かすと互いに傷も深くなるため、そう簡単には崩れない、という期待ももちろんある。現に、トランプ政権も、かなり現実的になってきているという見方もある。今後の動向から目が離せない。 

本来、本論考は、「資本主義を巡る二つの不都合な真実」と題して、「一億総活躍・女性活躍」などが剥き出しにしつつある「市場主義の暗い未来」についても考察を加える予定であったが、紙幅が尽きてしまった。予想外に誕生したトランプ政権対応については、これまで、安倍政権はとてもうまくやっている印象だが(例えば、以下の拙稿を参照して頂きたい:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170215/mca1702150500001-n1.htm)、米国の新政権が生み出す直接的な波乱とは別に、より構造的に、資本主義の根本を揺るがす難しい課題が待ち受けているような気がする。根本から物事を考えて動けるリーダー(始動者)が、混乱の世界・日本の中で、益々必要になる。 

次号以降、どこかで先述の「もう一つの不都合」について書いたり、読者の皆様と議論したりする機会があることを祈念しつつ、とりあえず、筆をおくこととしたい。 

筆頭代表・CEO 
朝比奈 一郎 

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<1> 青山社中フォーラム Vol.36 東京大改革のブレーン 
慶應義塾大学総合政策学部教授 上山信一氏による講演会 
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慶應義塾大学総合政策学部 教授の上山信一氏が青山社中フォーラムに登壇します。 

上山氏は、マッキンゼーで、1986年から2000年の14年間に20社の企業改革を手がけてこられました。大学に転じた後は、各地の自治体や中央省庁の改革の支援を手がけ、さらに大阪府市の特別顧問として橋下徹氏の改革を支え、現在は、東京都の特別顧問として、小池知事の改革を支援されています。 

今回の青山社中フォーラムでは、上山氏がこれまで経験された「改革の本質」やこれからの世界・日本・地域を動かすポイントをお聞きします。 

上山氏の講演が、皆様の「変革に向けたアクション」を起こしていく上での一助となれば幸いです。奮ってご参加ください。 

【日時】2017年3月31日(金)19時30分-21時00分 

【会場】CROSSCOOP青山 
住所:〒107-0061 
東京都港区北青山2-7-26 ヒューリック外苑前ビル(旧:フジビル28)9階 貸会議室フロア 
※地下鉄 外苑前駅 3番出口から徒歩2分、1階にカフェ「ベローチェ」 
URL:https://crosscoop.com/conference/access_aoyama 

【参加費】講演会2,500円(青山社中後援隊メンバーは1,500円、割引コード別途送付) 
※ 3/30 (木)以降のキャンセルは返金不可となります。コンビニ・ATMでチケットを購入し、キャンセルした場合は500円の返金手数料が発生します。 

【申し込みページ】 
http://ptix.co/2mBlWBo 

【内容】 
19時00分 受付開始 
19時30分 開会 
19時35分 講演 
20時30分 質疑応答 
21時00分 閉会 

【講演者プロフィール】 
上山 信一 
慶應義塾大学総合政策学部 教授 
1957年大阪市生まれ、京都大学法学部・米プリンストン大学大学院卒(公共経営学修士)。旧運輸省、マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。現在、東京都の顧問及び都政改革本部特別顧問、大阪府・大阪市特別顧問、愛知県政策顧問、新潟市政策改革本部統括、国土交通省政策評価会座長等を務める。 
専門は企業、政府、NPOの経営改革。 

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<2> 青山社中リーダー塾7期生募集(4月16日エントリー〆切) 
無料講演 会 兼 入塾説明会のご案内 (詳細はこちら
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アメリカのトランプ大統領誕生や、brexitを皮切りとした欧州の混乱など、世界秩序は新たな局面を迎えています。技術面でも、AIやIoTなどが、今後私たちの働き方や生活に大きな影響を及ぼすと予測されています。 

国内に目を向けると、少子高齢化への歯止めはきかず、とうとう出生数は初の100万人割れとなり、社会保障を始めとする現行の社会システムはいよいよ軋み始めています。東京オリンピックが終わった後、いわば祭りのあとに私たちはどんな社会に向き合っているのでしょうか? 

これからの日本を創る中心世代は現在20代、30代の若者です。この時代の変化がピンチとなるか、チャンスとなるかは一人ひとりの手に委ねられています。 

私たち青山社中は、個人にとっても、社会にとっても先の見えない混迷の時代だからこそ、小手先ではないヒューマンスキル(リーダーシップ、物事を構想する力、基軸力、教養など)がますます重要になってくると考えています。 

当日の講演では塾頭の朝比奈一郎(経済産業省出身、ハーバードケネディスクール修了)が、本格的な変化を迎える今、まさに若者が学ぶべきことについてお話しします。 

4月のエントリー〆切まで複数回、講演&説明会、現役塾生交流会を開催しますので、ご関心のある方は是非お気軽にご参加ください。 
(説明会、交流会参加は入塾に必須ではありません) 

青山社中リーダー塾募集要項、講演&説明会、現役塾生交流会詳細についてはHPをご覧ください。 
http://aoyamashachu.com/project/education/leader 

皆様にお会いできることを楽しみにしております。 

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<3> 青山社中リーダー塾通信 
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*青山社中リーダー塾6期生の座学編が終了 
リーダーシップの理論から、伝記、国家の盛衰、政治思想、経済思想、東洋思想、文化・文明論、政策論まで70回に及ぶ講義、本当にお疲れさまでした。次は4年間の実践編です。1年間で培った教養を土台に、さらなる飛躍を期待しています! 

*青山社中リーダー塾合同クラス 
2月25日(土)に東京大学大学院法学政治学研究科教授の五百旗頭薫先生をお招きし、講義いただきました。「日本で創る秩序と野党とムラ~三人の始導者~」という演題で、明治時代の混沌の中で「世論」という新しい秩序を創った福地桜痴などを題材に議論しました。「始めて」「導く」人がいて、新たな歴史は創られていく一方、様々なリスクも生じること、そして過去の先人から教訓を得ることは、物事を始める上で非常に有効な準備になり得ることを改めて学びました。 

*青山社中リーダー塾通信 5期生 加藤貴大 
リーダー塾5期生の加藤と申します。青山社中リーダー塾の座学を終えて1年が経とうとし、塾での深い学びを得て初めて少し大きい決断をしようとしています。 

今回はその決断について書かせて頂くと共に、僕なりの「青山社中リーダー塾での学び方」をお伝えできればと思います。 

僕は大学3年時に青山社中リーダー塾に通わせて頂き、同期の仲間から毎週刺激を受ける毎日を送っていました。今までまともに勉強してこなかったので、毎回が新しいことで溢れ、純粋に楽しかったことを覚えています。塾のおかげで物事は大局観を持って考えなければならないと認識することができました。 

大学4年となって次のステージに踏み出さなければならなくなり、中高大とお世話になったスポーツの領域で社会に貢献してみたいという想いが明確になる一方で、二の足を踏んでいる自分を常に感じていました。 

大学1年時にガーナへ渡り、バスケットボールチームを作ってきた時に、子どもに言われた「喉が渇くからバスケはできない」という言葉が、3年の時を経て「果たしてスポーツは社会にとって価値があるのだろうか」という哲学的な問いに変換されていました。 

「僕自身、運動をすることも好きだし、見ることも好き。国もスポーツを成長産業と位置付けている。けれども本当にそれは意味があることなのか・・・」 

このような時に「スポーツの起源は何なのか?」「スポーツビジネスの起源は何なのか?」「スポーツポリティックスの起源は何なのか?」「文明はなぜ起きるのか?」「娯楽が文化になる要素は何か?」といった塾で朝比奈塾頭が出す様な質問を自らに投げかけ、そして自分の中で暫定解を出すことで、腹決めをすることができました。 

初めは海外で最先端のスポーツビジネスを学ぼうと考えていましたが、ご縁があって日本のスポーツビジネスのお金の流れを変えようとしている企業と出会えたこと、そして海外発ではありますが日本でも応用できるであろうサービスを知ることができたことで、日本の企業で働きながら別途、個人でサービスを作るという腹決めをしました。 

塾で学んだ「lead the self」を常に念頭に置きながら、塾生として社会に貢献していきたいと思います。 

*NPO法人「地域から国を変える会」(リーダー塾生を中心に立ち上げた団体です) 
地域から国を変える会ホームページ 

【新潟県三条市】 
滞在型職業訓練施設、第1期しただ塾が閉講式を迎えました。県外から、観光業に関する職業訓練を目的に集まった塾生は、卒業後も全員三条市内に定住の予定です。「初動段階での地元体制づくり」や「若者に響く宣伝方法」など、言うだけでない、見せかけでない、本気の移住施策に必要なポイントが実証できました。 

【兵庫県多可町】 
多可町創業塾は短期集中型、4週間にわたって実施し、ビジネスプラン作成ワークを最終事業で実施し閉講しました。塾生のうち、早速、一人暮らし向け弁当屋を始める方が現れるなど、展開が早い多可町です。 

*一般社団法人「日本と世界をつなぐ会」(青山社中リーダー塾生を中心に立ち上げた団体です) 
取り組み紹介のページ 

新潟県の燕三条地域製品の展示即売会をホーチミンのイオンモール ビンタン店で2月18日(土)~2月26日(日) に渡って開催しました。「日本最高級の燕三条製品であなただけの生活を楽しもう。」というコンセプトでDIY、ガーデニング、美容など、伝統的鍛冶技術によって作られた高品質かつスタイリッシュな金属加工製品を販売しました。 
当日の様子はこちら 

毎日多くのベトナム人が会場に訪れ、特に「園芸鋏」や「作業工具」などを中心に、およそ2,000円台の商品の売れ行きが好調で、1日あたり4万円~10万円の売上がありました。ベトナムでは中々手に入らない優れた製品は、高くてもその価値をしっかり伝えれば、購入する消費者がいることが分かりました。 

売れる製品や価格帯を調査するテストマーケティングに加え、メディア、バイヤー等の関係者にも多数お越し頂き、燕三条地域・製品のPRやベトナムで継続的販売を行うためのパートナー探しの機会にもなりました。 

日本の地域(ローカル)と海外(グローバル)市場を結びつける仕掛け作りに今後とも取り組んでいきたいと思います。 

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<4> 青山社中のメディア掲載・講演等のお知らせ 
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<2月の実績> 
・2/9 三条市役所職員研修 政策形成における情報収集 (大山) 
・2/11 兵庫県多可町・創業塾 ビジネスプラン作成ワーク講師 (大山) 
・2/15 フジサンケイビジネスアイ「高論卓説」にて記事掲載 (朝比奈) 
題名:「麻生-ペンス」ライン 長期政権効果発揮 ~まさに「電光石火の早業」 安倍総理訪米を手放しで評価する~ 
・2/16 越智隆雄 国会議員による少人数勉強会で講演 (朝比奈) 
・2/23 生駒市役所にて職員研修 (朝比奈) 
・2/25,26 兵庫県川西市 総合計画策定ワークショップ講師 (大山) 

<3月の予定> 
・フジサンケイビジネスアイ「高論卓説」にて記事掲載 (朝比奈) 
・G1サミットにて講演 (朝比奈) 
・3/16,17 那須塩原市魅力創出事業 ワークショップ講師 (大山) 
・3/5,26 兵庫県川西市 総合計画策定ワークショップ講師 (大山)