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青山社中メールマガジンVol.101「優しい日本」が加速させる「厳しい現実」という皮肉 ~Ask what you can do for your countryを思い出そう~

間もなく平成が幕を閉じ、令和が始まる。 

1)平成の30年間の総括、そして、2)令和の見通しと私たちが考えておくべきこと、についての私見は、それぞれ、先月から連載がはじまったJB Pressで、3月・4月と論考を発表した。是非、セットでご一読いただければと思うが、中身を一言で言えば、両時代を通じて、経済面を中心に低落基調が避けられないという根拠を示し、今後、「何をすべきか」ということについて論じた。 

より具体的には、平成の凋落をもたらした主因である人材力の問題、更には、令和初頭に来ると思われる経済ショックや政治動乱を乗り切れるだけの人材力に期待できないという課題を取り上げて悲観的な見通しを示しつつ、それでも出来ることをやろうとの決意を書いた。 

「平成の30年、なぜ日本はこれほど凋落したのか」 
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55931 (アクセス数1位を記録) 

「「令和」初頭に高確率でくる日本の苦境を乗り切る道」 
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56219 (アクセス数4位を記録) 

ただ、平成についても令和についても、各種数字を元に厳しい現実について書いたのは確かだが、経済的側面やグローバル社会における相対的地位を気にしなければ、両時代とも決して悪い時代ではないとも言える。 

戦争に明け暮れた昭和に比べ、平成は、災害は多発したものの、我が国が直接に紛争に巻き込まれることは基本的になく、「全世代型社会保障」という安倍政権のスローガンに象徴されるように、一般に、社会保障はどんどん手厚くなった。パワハラもセクハラも、法令で禁じられ、「上司や親や教師」が「部下や教え子や我が子」に手をあげたり体罰を課したりするのが当たり前だった時代が嘘のようだ。間もなくはじまる令和という時代も、昨今の教育無償化施策や、働き方改革(長時間労働是正)の流れを受けて、どんどん「優しい」世の中になって行くのであろう。 

しかし残念ながら、物事には表と裏、光と影がある。いわば「無菌状態」で育った人ほど弱いものはない。少し大変なことがあると、すぐに逃げるか、或いはポキッと折れてしまう。可愛い子に旅をさせるどころか、「危ないので家にいなさい」という環境からタフな人間が生まれるわけがない。そして、大変なことがあっても、今までは自助、或いは共助で何とかしていた社会に、どんどん「公助」の長い影が伸びて行かざるを得ず、そのことがまた加速度的に「我も我も」と行政の支援を求める大衆を生むようになる。結果、国も地域も今や財政は火の車だ。せっかく平和で優しい環境・エコシステム(生態系)を作っても、それが丸ごと滅んでしまっては元も子もない。 

ランチタイムを意識することもなくサンドウィッチをかじりながら夢中になって働き続ける起業家たちが米国西海岸の急成長企業が世界を席巻し、軍隊組織ではないかと揶揄されるファーウェイをはじめ、膨大な人口の中の激烈な競争を勝ち抜いてきた中国人たちが創業した各種企業が米国企業を追い上げるという現実。その中に、「優しい環境」でぬくぬくと育ってきた人たちが飛び込んでも、全く太刀打ちできないのは明らかだ。日本発のユニコーン企業の数は、今や、インドや東南アジア諸国以下だ。 

こういうことを書くと我ながら歳をとったと苦笑せざるを得ないが、日本では、何かを実現するため「理不尽でもとことん頑張る」という若手は激減し、「安心の環境で頑張って成長したい」という若手が激増している印象を受ける。「良い仕事」というエサが降ってくるのを待っている。理不尽にまみれつつ何かを達成すべく主体的に「仕事」を進めるより、合理が覆う「勉強」環境を求める人が増えている。「仕事」は裏切るが、「勉強」は合理的で裏切らない。実践しなければ傷つかない。「修行」する若手は増えている印象だが、修行のための修行に意味はないし、実は成長しない。右は一例だが、まとめると、平和で優しい環境を作ることそのものが、人間の劣化をもたらし、実は滅びへの道を加速させている気がしてならない。 

では、ここまで来た「平和で優しい社会」を逆戻りさせれば問題は解決するのだろうか。書くまでもないが、それは全くもって現実的な案ではない。せめて、我々大人に出来ることは、行政や政治に何でも求める態度を改め、我々自身が、国や社会のために何ができるかを考えて、実際に行動することだ。理不尽があってもめげずに実践することだ。どんな些細なことでも良い。日本社会が良くなるために、一つのことで良いので、悪戦苦闘しながら何か実行することが肝心だ。そして、そのような「背中」を子供たちに見せてから、改めてこう説こう。 

「お母さんもお父さんも、君たちに暴力を振るうことは基本的にない。先生たちも暴力は振るわない。それどころか、誰かが襲ってきたら全力で守ってくれる。ただし、君たちがいずれ出て行く実際の世界は、ミサイルが飛んでくるかもしれないし、世界企業が根こそぎマーケットを持って行くかもしれないし、あらゆる不条理や暴力に満ちている。そういう世界でしっかりと生き抜くために、今のうちから、自分がやりたいこと・やるべきと思うことについては、たとえそれが不確実で先が見えなくても果敢に飛び込んでいきなさい。途中に「理不尽」があってもやり抜きなさい。間違っても、「将来安定しているから」という理由だけで医学部進学や公務員就職を目指すことのないように。」 

VUCAと呼ばれる激動の時代を乗り切るために。 

筆頭代表CEO 
朝比奈 一郎